第158話 しゅわしゅわと。


ふいに気づいたことがある。


何気なく目に入った景色

静まり返った古びた住宅街とか

まだ何も植えられていない田んぼとか

本当になんてことないような景色


そんなのを見ていたとき

ああ、消えてしまいたいのだ、と思った。


思う、よりも「腑に落ちた」ような。


殺してしまいたいとか壊してしまいたいとか、

そんなことではなく、

単純に消えてしまいたい、と。


何か特別ツライことがあったわけではない

強いて言えばいつもと同じ時の流れ

ただ無性にその流れからはみ出してしまいたかった。


そしてそれより何より

ここに、いたくなかった。


同じリズムで歩く、ペダルを漕ぐ、

起きる、寝る。食べて、飲んで。

そんな流れなんて知りたくなかったし、

それが無意識に染みついた身体が、


何よりも疎ましかった。


ゆるい日差しを浴びて

しゅわしゅわと消えていく。

そんな頼りない存在に

きっと私はなりたかったのだ。


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