第84話 ベランダにて


花の香りがした

一人立つベランダ

流れる車のライト

遠く響く電車の音

頬を撫でる風が

思いのほか優しくて

くすぐられる記憶

幼い頃を思い出す


キンと冷えた空気は

孤独を際立たせる

伸びかけの爪が

妙に気になる夜に

心を曖昧にして

手すりに額をつけた

過ぎ去った時を

胸に抱きしめながら


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