第53話 生きるとか命とか
これは本当に昔からの話
まだ私が小さな女の子だったころから
時折分からなくなっていたことがある
私が今生きているということ
そして誰かの命は失われているということ
生と死の境目を
まだ幼い私は様々に考えた
なぜ死んだなぜ生きた
私のこの両手は答えを求めるかのように動く
それでも何もつかめないまま
時は過ぎ私は死に続けている
正確には
人は皆、死へと向かって歩み続けている
それなのに生きるということには
一体どんな意味があるのか
行き着く先は死であるというのに
なぜ私は生きているのか
だからといって生きるのを
やめようとは思わないけれど
ただ怖いのかもしれない
見たことのない世界へと自然に導かれる恐怖
ずっと続いていくと思っていた道が
突然断ち切られてしまう恐怖
路上に捧げられた花束が
枯れているのを見ては胸が痛んだ
どこかの誰かの訃報を伝える
ニュースを見て愕然とした
そしてそんな臆病な自分が
ここに生きているという事実
世界は等しく理不尽で
キラキラ光り輝くものも
どす黒く汚れているものも
何かと混在しているけれど
そんな中で
なぜ私が生きているのだろう
なぜ私が生かされているのだろう
これは本当に昔からの話
まだ私が小さな女の子だったころから
時折分からなくなっていたことがある
ひとつだけ分かるのは
散々悩んで考えてただひとつ得た答えは
きっと私はいつも、生きることを選ぶ
ただそれくらいのものだ
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