第44話 蝶幻想


強烈な眠気の合間に見たのは

色とりどりの模様を持つ蝶だった

キラキラした粉を振りまきながら

ふわりふわりと優雅に宙を舞う


夢うつつのまま僕は蝶を目で追って

なんとなくそこに手を差し伸べる

ゆらゆらと僕の指先に停まった蝶は

その鮮やかな羽根をはためかせた


ぐるぐる回る羽根模様

強い酩酊感を覚えた僕は

ふわふわの思考のまま

左手で蝶を握りつぶした


粉々に散らばった蝶の姿

不思議と罪悪感はなくて

それよりも血すら流れないことに

妙な高揚感を覚えた


ゆるやかな風に飛ばされる蝶だったものたち

手のひらに残る鱗粉が不快で

視線を逸らすように目を閉じた

全ての景色が遮断される


次に目をあけたときここには

蝶の欠片も鱗粉すらもなかった

あの鮮やかだった蝶は夢だったのか

それとも現実だったのか誰も知らない

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