第43話 夏と蝉と雨と


不自然なほど突然に

蝉の声が途絶えた

ふと見上げた空は

重い灰色に浸食されて

さっきまで満ちていた

迸る命の叫びは瞬間

猛烈な雨にとって変わった


暴力的な音が支配する世界

自身の存在さえ疑わしい

水と音、ただそれだけ

それだけしか、ない


やがて叩きつける雨が

緩やかな終わりを見せた頃

うっすら差し込む光

また蝉は鳴き始める

ほんの少し穏やかに

雨を警戒するように

そしてその声はいつの間にか

夏の終わりのモノになっていた

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