第29話 信じて疑って


疑うということを

知らない時代が確かにあって

たぶんその頃の私の心は

ぷるんぷるんに透き通っていたんだと思う


なのにいつの間にか濁ってしまった私は

信じるということを忘れてしまった


疑うのは楽だ

何もかもを否定して

「感じる」ことすべてに蓋をする

そうしてなんとなく流されていればいい


信じることには力がいる

とてつもない熱量とか労力とか

もうそんなこと考えたくないくらい

疲れてしまったのかもしれない


あんなにみずみずしくて透明な心は

柔らかなゼリーみたいに砕けてしまった


崩れたゼリーはキラキラと輝きながら

溶けてなくなる時を待つ

そしてその美しい景色すら

ホンモノなのかを疑っているんだ


ずいぶん濁ってしまった

ずいぶん汚れてしまった

それでもそんな自分の心だけが

唯一信じられるものなのかもしれない





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