第104話 狩りって楽しいですね
「狩りって、楽しいですね」
でっぷりとした男が俺を睨んできた。
うひょー、こえぇ。
「貴様……なぜここに?」
でっぷりとした男は丁寧な姿勢を崩し、本性をあらわにしている。
「狼男が丁寧に教えてくれましたよ。あんたのことも全てね」
「あいつ、裏切りおって」
「で、これどんな遊びです?」
「狩りだよ」
「へー、それは楽しそうですね。じゃあ、俺も混ぜてくださいよ」
「もともとそのつもりだ。貴様も魔物の養分にしてやろう」
男がそういうと同時に、ぞろぞろと魔物が現れた。
だが、ゴブリンとオークしかいないあたり、でっぷりとした男が制御できる魔物は、このレベルが限界だとわかる。
とは言っても、一般的に見たらゴブリンやオークでも十分驚異なんだけどね。
「あー、違う違う。そうじゃない」
「なにが違う?」
「狩られるのはお前な?」
「は……? なにを言っている?」
でっぷりとした男が眉をひそめた。
と、その瞬間。
「薙ぎ払え――
俺の後方から強烈な風が吹く。
そして、――シュパッ、シュパッ、シュパッ、シュパッ、シュパッ。
鎌のような風の刃で、魔物の首が薙ぎ払われていく。
ミーアの魔法だ。
ミーアはなるべく森を傷つけないように魔法を使っているようだ。
「ひ、ひぃ……!?」
でっぷりとした男が情けない悲鳴をあげる。
「アランくん、速いですよ」
ミーアがテコテコと小走りで現れた。
その後ろにはテトラがいる。
「すまん、すまん」
俺はミーアに軽く頭を下げる。
「もう無茶し過ぎなんですよ」
「いや、まあ……あははは」
ミーアの言う通り、さすがに今日はもう無茶しすぎた。
体がへとへとだ。
「な、なんなんだ、貴様らは!」
「ただの旅人ですよ」
「旅人だと? くっ……なぜこんなやつらが……」
いや、お前が招いたんだろ。
自業自得ってやつだ。
「まあいい。いでよ、ハイオーク!」
男の後ろから、ひときわでかいオークが現れた。
ミーアの魔法でも倒して切れなかったやつだ。
「ふぉーほっほ! こいつはな、騎士団員を3人も驕ったオークだ。お前らを、豚のエサにでもしてやろう」
ハイオークが「うおおおおおお!」と雄叫びを上げる。
三メートルを超える巨体。
威圧感だけは凄いな。
ハイオークが「ふぅぅぅ」と鼻息を荒くして近づいてくる。
そんなに興奮すんなって。
ちゃんと相手してやるからさ。
「怖気づいて声もでないか」
男が「ふぉーほっほ」と下品な笑い声をあげる。
さっきから思ってたけど、こいつの笑い方、癖ありすぎん?
なんだよ、ふぉーほっほって。
こっちも笑いそうになるわ。
「ちょうど良かった。小腹が空いてたところなんだ」
「は?」
「ハイオークの肉ってうまいんだっけ? 食ってみたかったんだよなぁ。あ、でも火加減調整できんから、間違って灰にしちゃうかも」
「それなら私がやりましょうか? 兄様?」
「な、なんだ貴様ら! もういい! やれ、ハイオーク!」
「ぐおおおおおお!」
ハイオークがその太ったからは想像できないスピードで、突っ込んできた。
贅力は目を見張るものがある。
単純な身体能力でいえば、人間が敵うはずもない相手だ。
ハイオークが混紡が振りあげる。
「死ね! 小童が!」
でっぷりとした男が叫んだ。
次の瞬間、混紡が振り下ろされた。
だが――
――ドォォォン。
俺は魔力を腕に込め、素手で混紡を殴り、粉砕した。
「こんなもんか? オリヴィアさんの一発のほうが遥かに強いな」
「な、に……」
でっぷりとした男が絶句する。
ハイオークが目を点にしていた。
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