第81話 器と胸が大きい

 勝負は俺が勝った。


 ラストスパートで魔力を大放出し、超絶ブーストをかけ、僅差で勝った。


 オリンピック選手も驚くほどの速さだった。


 水上バイクとかと勝負しても勝てる自信がある。


 俺、マジで人間やめてるわ。


 オリヴィアからは「そこまで風紀委員長になりたくないのか……」と呆れられた。


 いや、なりたくないでしょ。


 ただでさえ大変な風紀委員だ。


 その長とか、軽く死ねる自信がある。


「じゃあ、お前の願いを聞こう」


 う~ん、なんだろうな……。


 やっぱりエロいことかな?


 胸を揉むか、胸に挟まるかの二択だ。


 いや、それ言うとガチで引かれそう。


「もう少し考えてもいいですか?」


「わかった」


 これでオリヴィア相手に、一度だけ何でも言うことを聞かせられる権利をゲットできた。


 やったぜ。


 エロゲ世界最高!


「ところでオリヴィアさん」


「なんだ?」


「大変だとは思わないんですか?」


「大変?」


「風紀委員の仕事です。魔法学園って、生徒の自治とか言いながら教師が職務放棄してますし」


 まあゲームの設定上、そうなってるだけなんだろうけどね。


 だけど、あまりにも生徒に任せすぎな気がする。


 そのせいかはわからないが、最近では先生が犯罪者になるという事態まで発生している。


「傍から見ると、大変に見えるんだろうな」


 オリヴィアが遠い目をする。


 ふむふむ。


 この人も苦労してるんだな。


「だがまあ、それも慣れた。昔からこういう立場を任されてきたからな。期待され、それに応える。ずっとそうしてきたから、今が大変だとは思わんよ」


 なるほど。


 ブラックな環境に慣れたせいで、色々と麻痺しているわけか。


 俺は慣れたいとは思わんから、やっぱり風紀委員長はパスだ。


「オリヴィアさんは、少し休んだほうがいいかもしれませんね」


「休む?」


「はい。わざわざ遊びに来たのに、訓練だなんて……それやっぱり間違ってますよ」


「……」


「休むときはしっかり休む。こういうときに遊ばなきゃいつ遊ぶんですか?」


 オンオフの切り替えって大事だよね。


 俺が前世の会社員時代で学んだ数少ない教訓だ。


 仕事をほどほどにして、休みの日はガッツリ遊ぶ。


 ゲームしたり、漫画読んだり、アニメ見たり、友人の家で宅飲みしたり。


 そんな感じで休めてたから、仕事もそこそこにやれたんだと思う。


 ガッツリ休みすぎて、仕事に行きたくなくなるときも多かったけど。


 まあつまり、休むのは大事だってこと。


 じゃないと人間、いつかは壊れてしまう。


 ずっと走り続けるなんて、少なくとも俺には無理だ。


 なんなら、一年中休みたいくらいだ。


「そうだな。お前の言うとおりだ」


「……はい。だから今日ももう遊びましょう」


「そこまで言うくせに、お前。私の仕事は肩代わりしてくれないんだな?」


 オリヴィアに咎めるような視線を向けられた。


「えっと……それはちょっと僕には荷が重いというか、なんというか……はい。すみません」


「まあいい。勝負に負けた以上、くどくどいうつもりはない」


「ありがとうございます」


 こういうオリヴィアのさっぱりとした性格、俺は好きだ。


 器が大きい。


 ついでに胸も大きい。


 やっぱり水着は最高だな。

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