第63話 大将戦
いやー、参った。
想像以上に、アーノルドが弱かった。
普通にジャンのほうが強いと思う。
ただし、対抗戦という特殊な状況なら、アーノルドのほうが有利かもしれない。
「アラン。おめでとう」
「ありがとう。でも、あんまりに手応えがなかったな」
「そう言えるのはアランだけだよ」
クラリスが苦笑いする。
「アーノルドは普通に強いよ。
なるほどねー。
「でもオリヴィアさんと比べたら、大したことないかな」
「優勝候補と比較するのはダメじゃない? 基準が高すぎるでしょ」
いやだって、しょうがないだろ?
オリヴィアからめちゃめちゃ訓練させられたんだから。
てか、オリヴィアとの訓練ほとんど意味なかったな。
あんだけしんどい思いしたのに、蓋を開けてみれば圧勝だった。
「まあこれで無事2勝だな。あとはジャンが勝てば、俺たちの勝ちだ」
「ああ。そうだな」
ジャンの体がぷるぷる震えている……なんてことはなかった。
ひとまず安心だ。
「それなりに頑張れ」
「それなりって……微妙な応援だな」
いや、こういうのって期待をかけすぎないほうがイイって聞くし。
「じゃあ死ぬ気で頑張れ」
「わかった」
「火葬は俺に任せとけ」
「死ぬ気でやるが、死ぬつもりはないからな?」
ジャンが眉を潜める。
人を応援するって難しいな。
「――ジャン。頑張って!」
クラリスがぐっと手を握りながらジャンに言う。
ジャンの顔がキリッとした。
漢の顔だ。
なるほど。
やっぱり美少女からの応援はやる気が出るよな。
ごめんな、俺が美少女じゃなくて。
そういえば、魔法で性転換とかできないのか?
一回くらい美少女になってみたい。
「クラリス。君に勝利の栄光を」
「……」
え、ジャン……いまなんて言った?
君に勝利の栄光をって言わんかった?
寒いわー。
夏なのに体冷えるわー。
急激に部屋の温度下がったわー。
キザ過ぎるでしょ。
真面目な顔で変なこというなよ。
ほら、クラリスも微妙な顔してるし。
てか、それどっかのロボットアニメのセリフだろ。
素でパクんなって。
「あ、うん」
クラリスが反応に困ってる。
そりゃ、そうなるわ。
「俺も勝利の栄光ほしいなー。誰かくれないかなー?」
ちらちらジャンを見ながら言う。
「……」
なんで無言なんだよ。
俺が滑ったみたいになってるじゃねーか。
クラリスもジト目で見てくるし。
まあいいけどさ。
「負けんなよ、ジャン。お前は強いんだから」
「ああ……」
ジャンが力強く頷いた。
その後、ジャンは係員に呼ばれ、舞台に上がっていった。
俺とクラリスはジャンの後ろ姿を黙って見送った。
頑張れ、ジャン。
ここで活躍すれば、君は学園のヒーローになれる!
クラリスもきっとお前を好きになってくれるはずだ。
「な? クラリス?」
「……なにが?」
クラリスが首をかしげた。
◇ ◇ ◇
大将戦が始まり、数分が経過していた。
スコアは1-2。
ジャンは試合開始直後に奇襲で1点取ったが、その後連続ヒットで2点を奪われていた。
ダンとジャンは同じ火系統の魔法を得意としている。
四大魔法の中でも、火魔法の使用者が最も多い。
使い勝手がよく、初級魔法から高い威力を発揮できるからだ。
またエリクソン家は代々火魔法を得意としており、能力の大半が遺伝によって決まることから、二人が火魔法を使うのは自然の流れであった。
さらに双子ともなれば、当然、似たような魔法を使う。
だからこそ、実力差が顕著に出てくる。
「「
二人が同じタイミングで火球を放つ。
しかし、ジャンの火球はダンのものよりも劣っていた。
魔法の撃ち合いでは、ジャンが力負けしてしまう。
だが、
――アランほどではないな。
アランの
ジャンは
ドンッ、ドンッ、ドンッ。
火球がぶつかり合う音が響く。
一方的な戦いにはなっていない。
――これなら勝てる。
ジャンはアランとの訓練で自分が強くなっていることを実感した。
そんな中、
「クソクソクソクソクソクソクソッ! ジャンの分際でぇ!」
しびれを切らしたダンが吠えた。
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