第60話 新人戦開始

「さあさあ! いよいよ始まります、新人戦! 注目選手はなんといってもこの人、ダァァァァン・エリクソンッ! 一年生ながらにして上級魔法を習得! 怪物との異名を持っております! しかし学園側も負けておりません! 名門フォードからアラン・フォードが参戦だァー! 今年も熱い試合展開が期待できそうですッ! 今年のルーキーたちはどんな戦いをみせてくれるのでしょうかー!」


 相変わらず、スタジアムDjはテンションが高い。


 てか、ダンの異名が羨ましい。


 俺もそういうの付けてくれんかな?


 業火の魔術師、アラン・フォードとかカッコよくね?


 ちょっと中二病臭いか……。


 そんなことより観客多くね?


 観客席は人で溢れかえっている。


 第二会場で個人戦が開かれてるから、そっちに観客が行ってると思ってたんだが、第一会場はほぼほぼ満席となっていた。


「君がアラン・フォードか」


 目の前の神経質そうなメガネ男が話しかけてきた。


 現在、学院の選手たちと学園の選手たちが、それぞれ一列に並び、向かい合っている。


 順番はそのまま出場順となっている。


 つまり、目の前の男が俺の相手というわけだ。


「あ、どうも」


「噂はよく聞くよ。学園では有名らしいね」


 最近、俺はいろんなところで噂されてるらしい。


 モテキ到来ってやつか?


 とうとう俺にもハーレムが来たようだ。


「そうらしいですね」


「僕たちと比べたら君なんて大したことないけどね」


 学院ってプライド高い人多くない?


 学校が王都にあるからかな?


 こんな辺鄙な学校よりも、そりゃあプライド高くなるわ。


 それに、ほぼ全員が貴族らしいし。


 まあ、学園も貴族ばっかりなんだけどね。


「お手柔らかに頼んます」


「頼んます? 敬語も使えないのか?」


 いやだって、君も敬語使ってないでしょ?


「……ダン様もこんなやつを気にするなんて。はあ、嘆かわしい」


 何が嘆かわしいんだよ。


 自分を俺様っていうやつのほう、よっぽど嘆かわしいだろ。


 俺様系男子とか、乙女ゲーかよ。


 ここはエロゲーかギャルゲーの世界なんだよ。


 乙女ゲーキャラはとっとと退場しやがれ。


 ちらっと俺様系男子のダンを見る。


 ダンとジャンが無言で睨み合っていた。


 同じ顔なんだから、もっと仲良くしたほうが良いと思うよ?


 そういえば俺も兄弟全員と顔が似てるんだよな。


 なんなら父親とも顔が似てる。


 わかった、あれだ。


 顔が似てると仲が悪くなりやすいんだ。


「ふんっ。俺様の相手はてめぇか」


 うわー、俺様とか言っちゃってるよ。


 てか、ジャンに喧嘩売るのやめろよ。


 今のジャンはスプーンもまともに持てないくらいナーバスになってんだから。


 これ以上彼を苦しめないであげて。


「悪いか?」


 ジャンが言い返した。


 おっ、ジャンのやつ復活したんだな。


 クラリスと2人にさせたのが良かったのかも。


 さすが俺。


 略してさす俺だ。


 あんまり略せてないな。


 そういえば、テトラは俺のこと”兄様”って呼んでるよな?


 さすにい、とか言ってくれないかな?


 いや無理だろうな。


「別に悪かねぇよ。無様に負けるのがアランからてめぇに変わっただけだ。むしろ俺からしたらありがてぇ。てめぇの醜態を世間にさらせるんだからよぉ」


「お前がアランを倒せるとは思えないがな」


 いや、そこ突っ込むところじゃなくない?


 俺はお前なんかには負けない、ってな感じで言い返すところだろ。


「ダン様がこんなやつに負けるわけがない」


 メガネの男が口を挟んできた。


 おい、メガネ野郎。


 無駄に話を広げんなや。


「フッ。お前らはアランの強さを知らないようだな。こいつはバケモンだぞ?」


 それは誉めてるのか? 貶してるのか?


 あと、なんでお前はそんなに自慢げなの?


 てか、俺の話題で盛り上がるのはやめてくれよ。


 誰か、助けて。


 こういうときはクラリスに助けを求めよう。


 大抵の男は美少女に弱いはずだから。


 っておい、クラリス。


 いま君、目をそらしたよね?


「所詮、学園レベルの話だね」


「戦ってみればわかるはずだ」


「自分が勝てないからって友達頼みか? なっさけねぇな、てめぇは」


「……ッ」


 ようやく口論に決着がついたようだ。


 これはジャンの負けだな。


 まあ口論で負けても試合で勝てばいいだけだし。


 気にすんなよ、ジャン。


 あ、でもクラリスが呆れた目でジャンを見てる。


 どんまい。


 それより、なんでさっきから審判は黙ってるの?


 口論を止めたりしないの?


 ジロジロと審判を見ていたら、ようやく審判が口を開いた。


「アラン選手。何か言い返さないのですか?」


 おい、審判。


 はよ新人戦始めろや。

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