第21話 俺TUEEEE

 女子寮に来たら、なんかヤバいことになってた。


 何がやばいかって?


 死体がゴロゴロ転がってる、殺人現場になってる!?


 ってのは冗談だ。


 倒れている生徒もがいるが、全員まだ息をしている。


 そんなことより、ミーアの雰囲気がヤバい。


 ミーアを中心にびゅんびゅんと風が吹いている。


 まるで台風のようだ。


 むしろあれはハリケーン!?


 ミーアがもっとも得意とする風系統の魔法だ。


 なるほどな。


 つまりミーアは風魔法で遊んでるわけか。


 って、そんなわけないよな。


「――憎い」


 ミーアが物凄い目で俺を見てきた。


 え、こわっ。


 そんな目で睨まないで!


 ミーアって実は俺のこと嫌いだったとか!?


 まさか友達だと思ってたの俺だけ?


 それ、ホントだったらかなりショック。


 泣いてもいいかな?


「全部私の手で殺してやる」


 ちょっとミーアさん、口調変わってますわよ?


 オホホホ。


 はしたないですわよ。


「ッ……」


 急に、風の勢いが強くなる。


 立っているのもやっとだ。


 実は俺って殺されるほど憎まれてたの?


 原因はあれか?


 俺がブレスレット変形させちゃったのを怒ってるのか?


 いやマジでごめんて。


 でもミーアも悪いんだよ?


 そんなに大事なものなのに、俺なんかに渡しちゃうから。


 あっ、それともミーアの体を貧乳だと思ったのがいけなかったのか?


 やっぱりそういうのはコンプレックスだよね。


 さっきはジロジロ見てごめん。


 だから許して?


 と思っていたが、ミーアの様子が突然変わった。


「なんで私だけ……」


 ん?


 なんで私だけ貧乳ってことか?


 いやいやミーア以外にも貧乳はいっぱいいるから。


 あっ、でもこの学園、巨乳が大きい人が多い気がする。


 ていうか、このゲームを制作した人たち、絶対巨乳好きだろ。


 クラリスもシャーロットも巨乳だし。


 オリヴィアも普通に胸大きいし。


 あとみんな美人だ。


 え、やっぱりここギャルゲーだったりする?


 もしくはエロゲー!?


 ……って、それはいったん置いておこう。


 かなり重要なことなんだけど、いまは目の前のことに集中しよう。


 俺、やればできる子!


「ミーアがああなってるのって、たぶん俺のせいだよな?」


 アランを成長するために運命ゲームが俺に仕向けてきたもの……のような気がする。


 だって俺、一応主人公だし。


「つまり、これは俺のイベントってことだろうな」


 確証はないけど、そんな気がする。


 もしも運命がそう仕向けてきてるなら、これは俺が解決すべき問題だ。


 何にしても、ミーアにあんな目はして欲しくない。


 俺はミーアの、弁当食べるときの嬉しそうな目が好きだ。


 あと俺に魔法教えてるときのちょっと誇らしげな顔が好きだ。


「ミーアにその目は似合わない」


 ってなわけでミーアさんをもとに戻すため一肌脱ぎますか。


 解決方法は簡単だ。


 ミーアの腹に刺さっている短剣を壊すこと。


 だって、ミーアの腹に短剣がぶっ刺さってるもん。


 あれ、めちゃめちゃ目立つよ。


 原因が短剣だって、ひと目でわかるし。


 目に魔力を込めてみたら、短剣からどす黒い魔力が流れ出てる。


 明らかにやばいブツじゃん。


 よし、短剣をぶっ壊そう。


 魔力を操作し、発火イグニッションを発動。


 ――できないだと!?


 な、なんで?


 魔法陣を展開させようとしても、魔力が弾かれる。


「魔力濃度のせいか?」


 ミーア周辺の魔力濃度はかなり濃い。


 魔法の発動条件には、魔力の比率が関係していると言われている。


 魔力濃度が低い場所では少ない魔力で魔法が発動するが、魔力濃い場所では多くの魔力が必要になるということだ。


 今回の場合でいえば、ミーアの周辺には、彼女の魔力が大量に浮遊している。


 こういう状況下では、遠距離魔法は使いにくい。


 つまり、無詠唱魔法イグニッションを発動できないということだ。


 そうなれば仕方ない。


 こうなったら奥の手だ。


「正面突破!」


 必殺! ゴリ押し!


 ミーアに近づいて、短剣を無理やり引っこ抜く。


 これぞ脳筋戦術!


 戦術と呼んで良いのか怪しいところであるが、仕方ない。


 俺から無詠唱魔法を取れば、あとはデブしか残ってないのだから。


 体内から魔力を放出し、体に魔力を纏わせる。


 そうすることで身体を強化できる。


 ミーアから感じていた圧が多少和らいだ。


 ってなわけで、ミーアのところへレッツゴー!


「ウグッ!?」


 ……苦ちい。


 たった数歩ミーアに近づいただけで、急激に息が苦しくなった。


 なるほどね。


 この程度の身体強化フィジカル・エンチャントでは、近づけさせてもらえないらしい。


 師匠は厳しいっすね。


 だったら、本気でやっちゃるよ。


 ミーアいわく、俺の魔力は相当な量らしい。


 ならまだまだ余力があるってことだ。


 とりあえず限界まで魔力を引き出してみるか。


「待ってろよ、ミーア。いますぐそっち行ってやるからな」


 体内に眠っている魔力を放出する。


 その瞬間、俺の中で眠っていた膨大な魔力量が開放された。


 体の奥底からじゃばじゃばと魔力が溢れ出してくる。


 物凄い量の魔力だ。


 やべぇ、これマジで全能感あるわ。


 もしかしてこれ、俺TUEEEEEEできるんじゃね?

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