第17話 魔力操作

 最近かなり痩せてきた。


 食事制限がうまくいったからか?


 いや、違う気がする。


 むしろ昔よりも食べるようになっていた。


 それなのに痩せてる。


 たぶん理由は夜の運動にある。


 女の子と夜に運動するといったら、あれしかない!


「遅いです! もっと早く動かしてください!」


「はい! 師匠!」


 魔法の訓練だ。


 教官はミーア。


 彼女、かなり魔力操作が上手いらしい。


 ある人いわく、魔力操作と夜のテクニックには相関があるらしい。


 なんてのは冗談だ。


 魔力操作だけで言ったら、それこそシャーロットやオリヴィアに負けず劣らずだとか。


 ちなみにミーアは年上だった。


 なんと二年生!


 てっきり同い年だと思っていたけど、先輩だったようだ。


 馴れ馴れしくして、すみません。


 と謝ったら、いままで通りでいいと言われた。


 でも先輩だし、一応さん付けしようとした。


 それも不満そうな顔をされて、結局今まで通りだ。


 先輩で師匠であるから敬うべきだと思うんだけど。


「こんな感じでどう?」


 俺は体内にある魔力を動かしながら、ミーアに尋ねる。


「う~ん、ちょっと違いますね。もっと流れるように扱ってください」


 ミーアの説明は感覚的だからちょっとわかりにくい。


 ちなみに俺は今、体内で魔力を循環させる練習をしている。


 魔力操作をうまくできるようになれば、痩せることができる!


 なんと魔力操作はダイエットに効果的だったのだ!


 はっはっは!


 これで無理な食事制限は必要ないぞ!


 脂っこい肉もお菓子もケーキも食べ放題だ!


 なんてわけはないんだけどね。


 俺はミーアを師匠と仰ぎ、連日、公園で魔力操作の訓練をしていた。


 もちろん訓練の対価はちゃんと払っている。


 ミーアにランチを奢るということだ。


 彼女は今までランチを食べていなかったらしい。


 ランチだけでなく、朝食も夕食もほとんど食べてなかったとか。


 そんなんでよく生きてこれたな。


 アランなんて毎日爆食いしてたぞ。


 なんでも魔族は生命力が高いらしく、人族と違ってそんな簡単にはくたばらないらしい。


 それにしても明らかに少ないと思う。


 最近はちゃんと食べるようになったからか、少しずつ健康的な体になってきた。


 良い傾向だ。


 でもまだまだ細い。


 目標はミーアを健康な体にすることだ。


 ミーアの体って線が細くて、貧乳……ゴホッゴホッ。


 違うところに意識を集中したせいで、魔力が逆流してきた。


 ……くるちい。


「どうやら今日のアランくんは集中力を欠いてるようですね」


「すみません、師匠」


 俺は貧乳も巨乳と同じくらい好きです。


 なので許してください。


「師匠って……ちょっと恥ずかしいからやめてください」


「はい、師匠!」


「それわざと言ってるよね?」


 教えを乞うてるのだから、やはり師匠だ。


 普段は普通にミーアって呼んでるけど。


 ちょっとミーアの耳が赤くなる。


 照れてるのか?


 この人、かわいいな。


 先輩だけど。


 子供みたいな見た目だけど。


 魔族だけど。


 あれ?


 ミーアって結構属性多くね?


 そういうの好きだよ。


「それでは次に強化術の練習をしましょう」


「はい師匠」


 強化術は魔力操作の応用だ。


 身体強化フィジカル・エンチャントとも呼ばれている。


 ちなみに一年生の必須科目に強化学というのものがある。


 ただし、一年生の段階では魔力操作しかやらない。


 強化術を本格的にやるのは二年生かららしい。


 もちろんミーアから教えてもらうのは二年生の内容だ。


 強化術は単純に体の身体能力を上げるだけでなく、様々な応用があるらしい。


 その第一歩として基礎魔力量を上げる訓練がある。


 以前ミーアに、


「魔力の総量は決まってるんじゃないの?」


 と聞いたことがある。


 そのときの答えがこうだ。


「はい。魔力量は先天的に決まっています。ですが、潜在的に持っている魔力を最初から出せるわけではありません。なので魔力を取り出す訓練が必要です」


 ちなにすべての魔力を使ってしまうと命の危険があるらしい。


 人間は無意識に魔力をセーブしているとのことだ。


 そして、俺はいま制御されている魔力を引き出す訓練をしている。


 体の奥底から魔力をひねり出す。


 うんちを捻り出す感覚にちょっと似てる。


 つまり、魔力とうんちは一緒!


 って、冗談はよそう。


「はあ……はあ……」


 熱い。


 体が火照ってきた。


 さらに出力を上げていく。


 しばらくすると、俺の体が湯気を出し始める。


 サウナに入ってるような気分だ。


 かなりしんどくなってきた。


 と、そのタイミングで、


「はい、ストップ」


 と声がかかった。


 俺は魔力をゆっくりと体内に収めていく。


 ふぅ、疲れた。


 慣れれば簡単に魔力を引き出せるようになるらしい。


「ではちょっと休憩しましょう」


「はい。師匠」


 俺とミーアは近くにあったベンチにちょこんと座った。

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