ホントはあなたで汚したい

 子供の姿の千歳を膝に乗せ、夜のまったりタイムを過ごしている。


「狭山さんがさあ、奨学金一括返済しようか迷ってるんだって」

『え、狭山先生も苦学生だったのか?』

「うーん、今結構な割合の学生が奨学金借りてるからねえ……大学の学費、昭和に比べたらずっと上がったもん」


 ちょっとバイトすれば国立の学費が稼げた時代、うらやましいな。


『えっ、そうなのか』


 千歳には意外な話だったみたいだ。


「まあ狭山さんの場合は大学は親に出してもらえたそうなんだけど、大学院は奨学金と同人誌と小説の稼ぎで行ってたんだって」

『へえー、そういやお前も奨学金いっぺんに返したんだよな』


 そう、千歳がくれた小判を拾ったものとして警察に届けて、三ヶ月落とし主が出ないから俺のものになって、それを現金化したのである。


「うん、そう。あの当時の収入で言ったらさあ、あのお金は貯金して、奨学金は少しずつ返すほうが賢かった気もするんだけど、借金のないきれいな体になりたくて……」

『きれいな体なあ、まあお前童貞だしなあ』

「それは関係なくない!?」


 確かに、セックス経験ないのを穢れなき体とか言うけどさ!


「まあその……狭山さんは小説も漫画原作も順調で余裕はあるみたいだから、「借金のないきれいな体になるの、すっごい気持ちいいですよ」って言っちゃった」

『何やらしい言い方してんだ』

「やらしい話題につなげたの千歳じゃん!」


 思わず大きな声を出してしまったけど、実を言うと俺、童貞ってことはそんなに気にしてないんだよね。プロに頼むだけのお金はあるけど、別にそこまでしてやることでも……といった感じで。

 いや、千歳がもし色恋に目覚めてくれたら、そりゃ行き着くところまで行きたいけども、でもそれは千歳の問題だしなあ。

 もしかしたら、一生童貞も覚悟しなきゃいけないかもな……。

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