再びの女装こなしたい
「お願いします! お礼はお支払いしますから!」
「い、いや、お金の問題ではなく……」
咲さんの声に、俺はたじたじとしていた。
狭山さんのDiscord、【茶の間大海】のボイスチャンネルで狭山さんと話していたら、咲さんが入ってきてこう頼むのだ。また女装してほしいと。
先日の【男の娘・女装子オンリー】のイベントで、あの女装売り子さんがすごくよかった、女装メイクチャンネルに出してほしい、との声が多数届いているとのこと。で、満を持してその女装売り子、すなわち俺の女装メイク動画を撮らせてほしいとのこと。
「女装前のインタビューも撮らせてほしいです、女装経験は? とか、かわいい女の子に変身するの興味ある? とか」
AVで致す前のインタビューじゃないかそれ!
狭山さんが言った。
「あの、すみません、咲はこうなったらもう止められないので……」
実の兄が言うなら、それはそうなんだろう。
「まあ、うん、聞いてればわかりますけども……」
咲さんがまた懇願してくる。
「お願いしますよー! 和泉さんは逸材なんですよ! ビフォーアフターの差のすごさが!」
差のすごさ、俺の普段が冴えないのではなく女装したらとびきりのいい女になるという意味だと思いたいな……。
これ、今断っても事あるごとにしつこく懇願されるんだろうなあ。うーん、だったらさっと引き受けてさっと終わらせるほうが後腐れなさそう。
「わかりました、1回だけならやります。いつがいいですか?」
「来週の日曜か、早くていいなら明日も空いてます」
「じゃあ明日で」
気が進まないことは放置しても何もいいことないから、さっさと済ませるに限る。
「じゃあ明日よろしくお願いします!」
話が爆速で進んでしまった。
俺がボイスチャンネルから落ちたあと、すべての会話を聞いていた千歳(朝霧の忌み子のすがた)がわくわくの瞳で言った。
『お前また女装するのか?』
「することになりました、致し方なく……」
『ワシ、お前がどういう風にあんな素敵なお姉さんになるのか見てみたい! ついてっていいか?』
「えー、それは咲さんによるかなあ」
LINEで聞いてみると、全然大丈夫とのことだった。なんならおっくんも興味持ってるから付いてくるって。
「見に来ていいってさ」
『やった!』
千歳はガッツポーズをし、俺は好きな人の前でがっつり女装をすることになってしまったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます