誤解のないよう伝えたい

 Webライターの依頼を受けているメールアドレスから、新着メール通知がスマホに来たので、見たら知らない人のメールだった。何だ? 

 それは藪春人という人のメールで、そこには丁寧な文面で、俺に取材したいということが書いてあった。……俺の、両親について。

 えーやだよー、俺、親のやってること見るとものすごく嫌な気持ちになるからもう関わりたくないよー!

 ていうか、前の件でシンパがかなり離れたっぽいと鹿島さんから聞いてるけど、まだニセ医学で稼いでんのかなあの二人。

 藪春人の名前で調べてみると、ニセ医学や陰謀論について見識があり、その辺の記事もよく書いてる記者ということがわかった。

 とりあえず「両親のやってることでわかったことはこのサイトに全部書きました、これ以上絞っても何も出ません」と、以前父親を旧Twitterで炎上させたときのサイトURLを貼って返信したのだが、またすぐ返信が来た。


「2022年年末、ご両親とその取り巻きが集団拉致されたことについて調べています。和泉様も拉致されたとのことで、それについて取材させていただけないかと思っています」


 え、そっち!?

 いや、何が起きたかは全部知ってるけど……どう説明すりゃいいんだ、悪霊が拉致したとか、その悪霊を怨霊がボコボコにして拉致された人を解放したとか!

 ていうか、うまくやらないと鹿島さんの将来にも関わる。生霊として悪霊の核的存在だった鹿島さんは、拉致の犯人といって差し支えないし……。

 どうしよう、いや困った時は南さんに相談すりゃいいんだよな、そうしよう。

 俺は藪さんに「何が起きたかは多少知っていますが、それを話していいかは別の人の判断を仰がなければいけないので待ってください」と返した。

 そういうわけで、休みなのに疲れたと千歳に愚痴ると慰められた。


『お前、本当親関連で苦労してるなあ』

「まあ親が直接関わる案件ではなかったけどね……鹿島さんのこと心配だし、どうしようかなって」

『南さんはなんて言ってたんだ?』

「藪さんの取材受けたほうがいいって。緑さんが全体を把握してて責任も持ってるから、藪さんと俺が会う場に同席してくれるって。こういう手合は全部本当のこと話して飲み込んでもらったほうが後腐れないけど、信じてもらうにはコツがいるからって」

『コツ?』

「いやほら、幽霊信じない人も多いじゃん」


 悪霊が拉致事件起こして、怨霊が悪霊をボコって救出したなんて言ったら、こいつ頭おかしいって思われる確率のほうが高い。


『ふーん、じゃあワシついてこうか?』


 千歳はなんでもないように言った。


「え?」

『ワシがその藪って人の目の前で姿ポンポン変えたら、少なくとも怨霊のことは信じるだろ』


 た、確かにそう!


「それいい! お願いついてきて!」

『よっしゃ、頼まれた』


 そう言う訳で話は進み、藪さんとはいつも使う個室のある喫茶店で会うことになった。

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