仕事はやっぱり気を張りたい
千歳に東京の相楽屋って店に誘われたので、俺が仕事で東京に出る日に落ち合って、相楽屋に行くことになった。
俺も相楽屋について調べたが、本当に普通の店のようだった。定食屋兼居酒屋という感じらしい。紺の暖簾に「相楽屋」と白く染め抜いた店構えの写真があった。わざわざ東京まで食べに行きたい店ではないけど、まあ千歳を構成してる人の思い出の店だしな。
で、俺は東京に取材に行く日のために、今日、久慈さんと嬉野さんとでリモート打ち合わせをする。なので、部屋着からまともな服に着替えてきた。そしたら、横の机で御札の仕事してた千歳に『いつも思うんだけどさあ』と言われた。
『上はともかく、下は着替える必要なくないか? どうせ画面に写んないだろ?』
俺は苦笑した。
「残念ながら、それは素人の意見と言わざるを得ない」
『えー、なんでだ!?』
「意外とねえ、立ち上がることがあるんだよ。あっちの資料取ろうとか、ちょっと離席しますとかの時に」
『そうなのか?』
千歳は疑う目つきだ。でも俺も、いつも下まで着替える理由があるのだ。
「もうずいぶん前の話だけどさ、クライアントと打ち合わせしてる時に、そのクライアントがちょっと資料取ろうとして立ち上がったら、下トランクスだけだったことがあって」
『ええー!?』
「それまでは俺も上しか着替えてなかったけど、似たようなこといつやらかすかわかんないと思って、下まで着替えるようになったんだよね」
『そ、そうか……』
若干引きつつも、千歳は納得してくれたようだった。
『じゃあ、まあ、打ち合わせがんばれ』
「うん、ちゃんと打ち合わせして、ちゃんと東京で仕事して、相楽屋でおいしくご飯食べられるようにする」
せっかく千歳と外でご飯食べる時に、仕事の愚痴とか言いたくないしな。まあただの定食屋だけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます