番外編 南さやかの動揺
さーて、今日は千歳さんに近況を聞く日! 緑さんから【和泉さんは好きな人がいるけど千歳さんはそれが誰かわからない】【千歳さんは本当に和泉さんのことが大事】という情報を仕入れている。千歳さんに分からないだけで、和泉さんの好きな人は周りの皆、察してるんだよねえ。
名目は近況を聞いて困ってないか聞くだけだけど! たっぷり推しカプを浴びてこよう!
そう思ったんだけど、本白神社の社務所客間で千歳さんと会ったら、なんだか千歳さんは変だった。
『ど、どうも……南さん、元気か? 楽しくやってるか?』
「え? はい、元気ですけど……」
千歳さんは、居心地の悪そうな、何かを隠しているような顔をしている。
『え、えっと、それならいいんだけど』
私はピンときた。これは腫れ物に触るような態度ってやつだ。え、私なにか心配されてる?
「何かありましたか? 私、何か変なところあります?」
千歳さんの憂いを解消しないと、私、推しカプエピソードが吸えないじゃない!
千歳さんの目が泳いだ。
『え、えっとその、なんでもない』
「なんでもなくないからお聞きしているんですよ、何かお困りですか?」
『え、えっとその……』
千歳さんは再び目を泳がせ、うつむいてしまい、それから言った。
『あの……南さん、結婚が嫌で尼になったって聞いて……びっくりして』
「へ?」
私はぽかんとしてしまった。いや、私が尼になったのは、煩悩が強すぎて興奮すると鼻血出て困ってたからだけど!?
「え、えっと、どこからそういう話になったんです?」
『その……金谷司さんが言ってたらしくて……』
いや、確か司さんとは縁談出たことあるけど、私、煩悩強すぎて結婚に向きませんって言って断ってるけど!?
私は苦労して千歳さんにあれこれ聞き出し、狭山さんの義実家問題から司さんが【さやかさんは俺の家がアレすぎて結婚が嫌だったから尼になってしまった】と思い込んでいることを知った。いや違うわ! あっでも【煩悩が強すぎて結婚に向かないから】と私が断ったあと、すぐ仏門に入ったら結婚が嫌だったせいと思うかも! うわーごめんなさい!
私は頭痛を感じ、額を押さえてため息をついた。
「いえ、その、本当に煩悩が強すぎて結婚に向いてなかっただけなんですよ、金谷家の環境とかは全く判断材料になってないです」
『でも司さんは自分の家がダメでものすごく嫌がられたせいだと思ってるし、だから自分は結婚は無理って言ってたって』
千歳さんはしょぼんとしてしまった。
「まあその……話を聞くに、司さんの奥さんになる人は苦労しそうですけど……どうしよう……」
責任感じちゃうな……。
うーん、とりあえず、又聞きはよくないから、狭山さんに詳細を聞こうか。それで、本当に司さんが私のせいで結婚を諦めちゃったっぽいってわかったら、司さんに会って直接話して誤解を解こう……。
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