第11シーズン

大人にするため励ましたい

 おだやかな秋晴れの日。お昼のサンドイッチを食べていたら、千歳(朝霧の忌み子のすがた)に聞かれた。


『そう言えば、今度選挙なんだろ?』

「そうだね」

『お前、また期日前投票っていうのに行くのか?』

「そうしようかなと思ってるけど……ていうかなんで他人事みたいに言うの、千歳も投票するんだよ?」

『えっ?』


 千歳はぽかんとし、それからはっとした顔になった。


『あっ! そうかワシ二十歳だ!』

「今は18歳から選挙権あるけどね。白票はおすすめしないよ、あれ白紙委任状と同じだから」

『え、投票……誰にすればいいんだ……全然わからん』


 千歳は頭を抱えてしまった。


「うーん、NHKのサイトかなんかに各区の候補者載るから、うちの区の候補者確認して、その候補者のサイト調べて、あと悪評も見ておくんだね」

『えー、悪評なんてどう調べればいいんだ?』

「Xが揉め事の坩堝になってるから、党か候補者の名前で検索かければそこそこ出る」

『ワシ、Misskeyのほうが好き……』


 千歳はTwitterに料理の写真を載せていたが、Misskey.ioの料理系チャンネルに載せるほうが反応をもらえるとかで、最近はすっかりそっちだ。まあマスが多いとねえ、見てもらえないんだよねえ。

 俺は千歳を励ました。


「まあ、これも大人になるための試練だと思って、がんばんな」

『はーい……』


 うーん、この素直さ。【大人になる】を口実にすれば、千歳は結構言う事聞きそうだ。でも、なんでもかんでも言うこと聞かせるのはかわいそうだから、多用するのは止めよう。肝心な時だけ、本当に必要なときだけに言うようにしよう。

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