第5話 空を駆けるお父様ぁぁぁぁぁ!!

 私の目の前でお父様が空を舞い、やがて地面に落ちると白目になってピクリとも動かなくなりました。私はすぐに傍らにしゃがみこみ、お父様を抱えて……


「お、お父様ぁぁぁぁ? 目を開けてくださいませんこと!? お父様! お父様ぁぁぁぁぁぁぁ!! ……いたいっ」

「ちょっとフラム。なんで変な雰囲気にしてるのよ。気絶してるだけなんだから寝かせておきなさい」



 私の頭を叩いたのはお母様。

 せっかく一子相伝系の奥義の伝授で、親であり師匠でもあるお父様を倒して、悲しみに暮れる感じを再現してましたのに。

 それにしても……お父様は昔、Sランク冒険者だったらしいから、てっきり全部叩き落とされるかと思ったのですけれども……。

 はっ! きっと私を体裁よく送り出すために手加減してくれたのね!? ありがとうお父様。 フラムは絶対に魔王を倒す追放勇者を見付けてあわよくば玉の輿に乗って帰ってきますわ! ホントに復活するのかはわからないけれども。

 そうと決まったら早速旅の準備しないといけませんわね! ガット君とシーリスさんの所で色々買ってこなくっちゃ。


「ねぇお義母さん? フラムにホントの事言わなくてもいいんですか? 」

「う〜ん。フラムに言ったとしても……バカだからねぇ……」

「そうですよねぇ。バカですもんねぇ……。別に貴族でもなんでもない普通の家の娘なのにあんな喋り方する子だし」

「それにしてもあのバカ息子相手にあそこまで圧倒的とはねぇ。あたしゃ、孫可愛さに鍛えすぎたかしらねぇ?」

「お義母さんもバカですもんねぇ……」

「なにか?」

「そちらこそなにか?」

「「…………」」



 ん? おばあ様とお母様がなんか言ってるけどなにかしら? バカバカ聞こえるけど……きっとおじい様のことね。私は準備をはじめましょう。



 てなわけで町へやってきましたわ〜! 冒険の為のお買い物ってこんなにワクワクするものですのね〜!


「いらっしゃいま……ひいっ!」

「ごきげんよう、ガット君」

「い、いいいいらっしゃいませっ! フラム様!ご、ご用はなんでしょうかぁぁぁぁ!」

「なんで様付けなのかしら? まぁいいわ。えっと、火付け用の鉱石をいくつかと、干し魚と干し肉をこの袋いっぱいにお願いしますわ」

「か、かしこまりましたぁー! って結構な大きさの袋ですね。どこかに行くのですか?」

「ちょっと冒険へと。ところでガット君はもう冒険者には戻らないのかしら? ガット君の能力ならズバンスパーンっと無双できちゃいそうですわよ?」

「いえ、俺はこの世界で生きてくって決めたので、冒険者にはもう……あ、注文の品はこちらになります」


 む、残念ですわ……。てっきり、『やっぱり俺、冒険者の夢が捨てられないんですぅぅぅっ!』ってなるかと思いましたのに。


「ありがとう」


 さぁ、次はシーリスさんのところで剣を買いましょうか。




 ━━━━


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