第23話 一週間の成果
金曜深夜──時刻は23時50分を回っていた。
日課にしている体力練成と戦技練成を終え、少し前に家に帰って来た。すぐにシャワーを浴びたが、自分の部屋に戻る頃にはもうこんな時間になっていた。
首にかけたタオルで、髪の毛を吹く。
シャワー直後の火照った身体に、クーラーの風が心地よい。
俺は椅子にゆっくりと腰かけると、アムリタを口に含んだ。
「腹が減ったな……」
誰もいない部屋で、思わず一人呟いた。
寝る直前のこんな時間に食事を摂るのは、好ましいことではないと理解している。
だが、まだまだ成長途中のこの身体は、俺の意思以上に血肉となる栄養を欲しているようだ。
単なる空腹とは別の、若いこの時期特有の飢えにも似た欲求が、内から『何か食わせろ』と訴えかけている。
俺は【生産ボックス】から食事を取り出した。
勉強机に湯気を立てるコンソメスープが出現する。
黄金色のスープの中で食材たちが揺れている。鶏肉のジューシーな匂いが鼻腔を満たすと、思わず腹が鳴った。
***
【生産ボックス】
道具等の自動作成スキル。必要な素材を入れることで、多種多様なアイテムを作成できる。製作過程を経験または学習すると、類似品の作成が可能となる。レベルが上がると作成速度や品質が向上する。
***
このスキルで作成できるのは武具や道具ばかりでなく、料理さえも作ることが可能なのだ。
トレーニングに出る前に、必要な食材と食器を【生産ボックス】に入れておいたのだ。
グラン・ヴァルデンに、エアコンはない。
だが、その代わりに現実世界にはないこう言ったスキルが存在するのだ。
世界とは案外上手くできているのかもしれない。
そう言う意味では、俺が持ち帰った異世界アイテムも、その一種だろう。
【アイテムボックス】には今も、俺が異世界で入手し現実世界に持ち帰った大量のアイテムが眠っている。
最速でこの世界の頂点に立ち、何者をも寄せ付けない超越した力を手にするには、そして過去のヴァレタス・ガストレットをも超えるには、異世界アイテムも、十二分に活かしていく必要がある。
持っているだけでは宝の持ち腐れだ。
だから最近、アイテムを有効活用するために、まず中身を整理した。
種類別に回復アイテム、武器防具、魔法道具、戦闘訓練用アイテム、魔物の素材などに分類したのだが、そのひとつが異世界食材だ。
異世界の食材にはほかのアイテム同様に、現実世界の食材にはない特殊な効果を与えるものが数多く存在する。
たとえば本日の夜食はコンソメスープだが、その食材は──
***
【怪鳥ロックの胸肉】
怪鳥ロックの胸肉。食べると「HP」「スタミナ」が上昇する。
【魔人パンプキン】
古の魔人族に伝わるパンプキン。食べると「魔力」が上昇する。
【妖精キャロット】
妖精族に伝わるキャロット。食べると「MP」「魔法攻撃力」「魔法防御力」が上昇する。
【溶岩ラディッシュ】
溶岩地帯でごく稀に見つかる希少なラディッシュ。食べると火傷の耐性が上昇する。
【巨人ブロッコリー】
巨人族に伝わるブロッコリー。食べると「筋力」「耐久力」が上昇する。
***
ほかにも様々な食材がある。これらを使わない手はない。
俺はスープを啜った。
肉の旨味が溶け出し、野菜の風味と混ざり合ってシンプルながらも味わい深さがある。
一息吐くように、俺は溜息を漏らした。
丸七日が経ったのか……。
ふとそんなことを思う。
ちょうど一週間前だ。俺がグラン・ヴァルデンから現実世界へと帰還したのは。
お肉を頬張りながら、俺はステータスを確認してみた。
***
名 前 凡野蓮人
称 号 狂戦神・統一王・覇王…➤
年 齢 14
L v 1
◆能力値
H P 2,267/2,267
M P 130/1,630
スタミナ 920/1,568
攻撃力 890
防御力 999
素早さ 1,837
魔法攻撃力 899
魔法防御力 870
肉体異常耐性 1,411
精神異常耐性 1,773
◆根源値
生命力 285
持久力 379
筋 力 228
機動力 280
耐久力 237
精神力 300
魔 力 292
◆固有スキル
【王威Lv.4】
◆スキル
【鑑定Lv.112】【パーフェクトボディコントロールLv.58】【
◆戦技
【徒手格闘術Lv.65】【暗殺術Lv.65】【ダガー術Lv.65】【特殊ナイフ術Lv.65】【短剣術Lv.75】【剣術Lv.75】【特殊剣術Lv.1※使用不能】【短槍術Lv.75】【槍術Lv.75】【特殊槍術Lv.1※使用不能】【盾術Lv.75】【大盾術Lv.1※使用不能】【杖術Lv.75】【棒術Lv.75】【
◆魔法
【炎魔法術式Lv.20】【水魔法術式Lv.20】【氷魔法術式Lv.20】【風魔法術式Lv.20】【雷魔法術式Lv.20】【草木魔法術式Lv.20】【土魔法術式Lv.20】【身体魔法術式Lv.20】【精神魔法術式Lv.20】【空間魔法術式Lv.20】【創作魔法術式Lv.20】
***
ステータス不足で使用不能になっていたものも、だいぶ消えてきた。重量のある武器もそろそろ扱えるようになるだろう。
だが、トレーニング場所を別に見つけなければならないな……。
実は危険と判断して、弓術、
もっと人目を憚らず、遠慮なしに、思う存分に戦闘訓練を行える場所を探さねばな……。
「ごちそうさまでした」
夜食を食べ終え時計を見る。もう日付が変わっていた。
俺がなぜ深夜にトレーニングをしていたかと言うと、今日は塾だったからである。
そのために、俺はもう何回か睡眠時間を削ってしまっている。
睡眠は貴重だ。特に成長期の身体にとって、十分な睡眠は必須と言ってよいだろう。
少なくとも、塾の学習などよりも。
思想家タキノス・ペロン曰く──
『十分な睡眠は、エリクサー千本分の価値がある』
また笑いで悟りを開いた喜劇王タサカ・ホ・ノア曰く──
『勉強している暇があったら、寝ろ』
まったくその通りである。
塾に行くぐらいならば、睡眠に当てた方が価値ある時間を過ごせる。
どちらにしても、やりたいことが色々とあるのだ。
新しい魔法の術式も組みたいし、学習の時間に当てるにしても、医大レベルの医学や薬学を体系的に学びたい。
とうの昔に、高校の学習など終了してしまっているのだから。
「いよいよ、塾が弊害になってきているな」
明日、父さんと交渉してみるか。
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