第10話 2層目の先へ

 ハイデルンと分かれたスコはそのまま迷宮へ入るための昇降機に乗って1階層へ来ていた。今回の目標はいくつかある。まずレベルを10まで上げる事。次に2階層へ行くことだ。


「今が7レベルだからとりあえずモンスターどんどん倒していこうかな」


 アキレス腱を伸ばし、軽く屈伸をする。身体を捻り簡単なストレッチをしてスコは走り出した。レベルの恩恵により現在スコは息切れなしで50m以上走れるようになっていた。そのため走りながらモンスターを探し、倒す。この一連の流れが非常にスムーズに進んでいる。複数いる場合でも問題はない。基本1階層のモンスターは執拗に何故か肩を狙ってくるため接近を武器を持って振り回していれば接近前に倒せるのだ。


 倒したモンスターが落とす魔石についてだが、ちょっとだけ考えた結果。スコは魔石を固めてマゴノテに使う事に決めた。最初は適応化というものをやるか考えた。ご飯を食べる数が減らせる、排泄なんかも減る、など色々メリットは確かに感じる。でもどうしても魔石という未知のものを自分の身体に入れるという事に抵抗があった。だからまず武器を強化する事を優先しようと思ったのだ。

 最初はただの遊び半分で折った枝だったが、長さ的にも重さ的にも非常に使いやすく、また一度強化されたことによりただの枝というよりはちゃんと武器に近い枝に変わったように感じたからだ。



「よっと」


 こちらに向かってくる小鬼の頭をマゴノテをしならせて横から殴打する。攻撃を受けた小鬼は消失するがすぐ後ろにいた小鬼が叫びながらこちらに向かって突進してきた。スコは先ほど殴った攻撃の勢いをそのまま利用し両手で握ったマゴノテを回転させ、その先端で小鬼の喉を強打する。


【レベルが上がりました】


 狩りを始めて3回目のレベルアップの声が聞こえたため、一旦モンスターのいない場所を探し移動する。迷宮の壁の近くまで移動し周囲にモンスターや人がいない事を確認して自分のステータスを確認した。


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 名前:スコ・カタタキ

 称号:ネオ・ボッチ

 種族:人間

 レベル:10

 筋力:18:腕立てを100回出来そう

 速さ:16:50mを7秒で走れそう

 持久力:17:1キロ走れそうじゃない?

 精神力:60:心臓に毛が生えそうだぜ

 スキル:ダダッコ、辻斬りメンゴ

 装備:木剣マゴノテ改+3

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 悪くない。これで目標の10になった。腕立てもたくさんできるようになったみたいだが特段スコの身体に見た目の変化が起きているわけでもないようだ。スコは思いつくマッスルポーズを取ってみるが特に筋肉が付いたような気はしない。来ているシャツを捲ってみるが腹筋が割れている気配もない。


「いや、でもちょっと締まったかな?」


 目標レベルに達したから次は2階層へ行こう。1階層を走り回っていた際に2階層へ行く階段は見つけたある。まずはそこまで移動することにした。道中木になっている謎の赤い実を採り口に運ぶ。リンゴみたいな果実なのに驚くほどすっぱい。だけど今はこれしか食べるものがないのでスコは口の中に唾液をいっぱい出しながら2個ほど胃の中に入れた。


「お、あれか」


 

 何人かの攻略者ストラテジー達の姿も見えた。2階層の階段の周辺には警備のような人たちが立っており、数段程度しかない階段だが攻略者ストラテジー達は1人ずつゆっくり慎重に降りているようだ。万が一足を踏み外したら死んでしまうと考えればそれも仕方ないのかもしれない。


 

 しかし列に並び2階層へ行く順番を待っていると少し問題が発生した。


「一応1階層のモンスターの攻撃喰らってもダメージ受けないので大丈夫ですよ?」

「いやいや。そんな意味の分からないこと言われてもね。いくら迷宮攻略を推奨しているとはいえ、裸装備に近い攻略者ストラテジーを2階層へは行かせられないよ。1階層に比べモンスターの数も増えるし厄介なモンスターだっているんだ」

「でも1階層のモンスターと攻撃力は変わらないんですよね?」

「だから君のような裸装備だと攻撃が当たったら死んでしまうだろう。装備を整えるために1階層なら緑小鬼しか出ないから、頑張って魔石を溜めてだね」

「ああ!! わかりました! 出直します!!」


 頭を掻きむしりながらスコはそう叫んで走って退散した。後ろから「走るな! 誰かにぶつかって死んだらどうする!」という声が掛かるがスコは聞こえないふりをして全力で逃げたのだった。


「まさか2階層へ降りるためにそんな条件を言われるなんて」

 

 そうまさかの2階層へ行こうとしたところ、何の防具も身につけていないという事で2階層へ降りる階段をスコは通る事出来なかった。そしてこのやりとりでスコは大きな勘違いをしていたことに1つ気づいた。それは1階層に出てくるあのモンスターの攻撃をこの世界の住人が受ければ十分致命傷だという事だ。



「うすうす思ってたんだけど、この世界の人って俺以上に脆くない?」


 だがこれで色々な疑問が解決した。どうして全員あんな厳重に装備を気にするのか。それは一撃でも当たったら死んでしまうか。そしてそんな貧弱な身体で重い金属板を纏った鎧を付けるから自然と足が遅くなる。ずっとスコは疑問だった。なぜ1階層で戦う他の攻略者ストラテジー達はあんなにのんびりしているのかと。それは一度の戦闘で休憩を取る必要があるのだ。だからソロで潜るなんて酔狂な事をする攻略者ストラテジーは誰もいないし、パーティも必ず6人以上で殆ど組んでいるようで戦う人と休む人で分担しているのだろう。


「それにしても参ったな」


 スコは今の力量を自分なりに客観的に考えても1階層で戦うのは不十分に感じている。だから2階層より先に行きたいのだがあの様子だと装備がなく、ソロで潜っている限り難しそうだ。


「んー……もう普通に飛び降りちゃえばいいか」


 すぐ1m下にある2階層の地面を見て自然にスコはそう口にした。


 

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3段飛ばしで階段を降りても死なない俺は最強! カール @calcal17

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