第19話 わくわく『ドリームランド』遊園地
王国各地では、ハーベスト領から広まった、手押しポンプの設置が進んでいるが、上下水道の整備は資金的に難しくて、長期計画となっている。
だが《杜のくまさん鉄道》の幹線の開通で、人や物の流通が飛躍的に拡大し、南北の農産物の取引や漁業の振興での水産物の流通が、商業の発展を促進し、そして王国の人々の生活を日々豊かなものへと変えている。
『だが足りないっ。人々を笑顔にするためにはもっと、何かが足りないのだっ ! ! 』
そこで俺は、子供から大人まで楽しめる娯楽施設、遊園地の建設を計画することにした。
《ウインランド王国領民手つなぎ 第三弾 『ワクワクドリームランド』計画》である。
建設地に選んだのはハーベスト領ブルータスの街と、ハバナの街の間のある『トテロの村』
距離的に駅を設けた場所だが、酪農農家以外何もない草原地帯である。
鍛冶ギルドで計画を話すと、にわかに職人達の目の色が変わった。
観覧車にジェットコースター、回転木馬にトロッコの列車、おとぎの国のお人形、あるいは動物達のメルヘンな城や建物、あとは皆さんのアイデア次第と言ったら、壮絶無比な駆け引きが始まった。
〘誰か何を創るか、〙である。各人の
もの造りの専門家でも、意外に夢のあるもの創りに飢えていたらしい。
結局、鍛冶ギルドの中で
孤児院の孤児の中でも、ミーシャはメルヘンをこよなく愛する少女だ。
コウジに助けられた時には、まだ4才だった彼女も4年経って、8才の年少組最年長に成長している。
ミーシャは、少女達が誰しも憧れる王子様や魔法使いの夢物語を、さらに想像を膨らませて自分の物語を創ってしまう子なのだ。
そして、その夢物語を絵本に描くのである。
今では孤児院の図書室に、ミーシャが描いたその種の絵本が何冊もあり、年少組の愛読書になっている。
そのことを知っている俺は、鍛冶ギルドの皆に『参考になるかも知れない。』と話したところ、次の日から孤児院の図書室は、鍛冶師達で溢れることとなった。
「ねぇ、おじちゃんっ。そのご本おもちろいのっ?」 幼気な年少組の子に尋ねられて、
「あぁ、おじちゃんはこうゆうお城が創りたいんだよ。」 そんな会話がなされたとか。
ようやく鍛冶ギルドの面々の分担が決まったとの報告を受け、俺はギルドへやって来た。
安全性の徹底と、そのための技術指導のためだ。レールや車輪、車両の骨組は鉄製として、シートベルト又は固定枠を、緩みなく作ることなど、多岐に渡り詳細に説明する。
子供達の予期せぬ行動にも対応できるよう、安全ネットを張り巡らせるなど、念には念を入れて、二重三重の安全対策を指示した。
「それぞれの施設は完成した後、人形を使って100回の試運転を行います。もし一回でも事故が起きればその施設は撤去します。
再試験は一年後とし、すぐには認めません。
じっくり安全と取り組んでいただきます。」
皆んな、その厳しさに声も出ないでいる。
安全第一、事故なんて懲り懲りだからね。
私の名はミーシャ、孤児院の年少組です。
コウジ兄ちゃんが『ドリームランド』というものを創るって聞いて、その中に私の夢見る『おとぎのお城』が造られるって聞いて、もう大興奮です。
お城を造る鍛冶ギルドのおじさんが、絵には描かれていない扉とか置物とか天井の色とかを私に聞いてくるんです。
その度に一生懸命考えて、でも気分は楽しみで楽しみで『わくわく』しています。
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ブルータスとハバナの街の中間に造る新たな遊園地の名前を、王国中から公募したんだ。
宣伝を兼ねてだけど。
自分の考えた名前が採用になるかも知れないと、王国中から凄まじい数の応募があった。
以下ベスト5 〘俺の感想。〙
第五位 『杜の夢の国』
〘なんか、インパクトに欠けるね。〙
第四位 『ハバナ·レジャーランド』
〘うん、地名そのままな気がする。〙
第三位 『くまさんの遊園地』
〘くまさん鉄道と名前がかぶってないか。〙
第二位 『聖ナターシャ公園』
〘ナターシャさんの知名度、全国的だな。〙
そして第一位に選ばれたのは、
第一位 《わくわくドリームランド》
〘うん、なんか夢のある響きでいいな。〙
完成した遊園地の施設はジェットコースター3種類の施設を始め乗り物が32施設もある。
ミーシャのメルヘン城や海賊船など、建物が16施設。
その他、魔物退治の射的や、杜の生き物捕縛輪投げなどの遊具施設が12施設ある。
もちろんそのほかに、食事施設や休憩施設が25カ所あり、トイレも十分にある。
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さて、例によってレイネと孤児院御一行様の『わくわくドリームランド』の一日である。
「うぉ〜すげぇ〜。ものすごく広いぜっ。」
「皆さん〜、一人で勝手に行動してはいけませんよ〜、迷子になりますからね〜。
シスターナターシャ様が、持っている旗が、いつも見えるところにいてくださいね〜。」
「ミーシャ、ミーシャのお城はどこなの?」
「ほらあそこよ、お花畑の向こうにあるわ。」
「シスターっ、早く行きましょうよ。ミーシャのお城が見たいのっ。」
「だめよ〜走っては。皆んなで一緒にね〜。」
「うわぁ〜、あれがジェットコースターなのねひっくり返ってるじゃないっ、怖そうっ!』
『ものすごく急な坂を、ものすごい速さで走ってるわっ。」
「見て見てっ! 逆さまになって、落ちないのかしら?」
「あんなの平気だよっ、僕なんかグライダーで慣れっこだよ。」
「あの人、頭が大きいと思ったら、ウサギさんの被りものをしているのね!」
「うわぁ~、かわいいねっ。あっちにはタヌキさんもいるわっ。」
「あっちこっちに、いろんな被りものをした人がいるのね。」
「あっだっこちてる。あたちもちてほちい。」
「コウジ兄ちゃんは、迷子にならないように、レイネお姉ちゃんと手を繫いでるの?」
「そっ、そうだよ。アーシャとも繋ごうね。」
「コウジさんは、目を離すとすぐ私の側から居なくなるから、手を繋いでるのよ。うふふ。」
この『わくわくドリームランド』は、いずれ王都と北部地域の中間辺りに一か所、王都と南部地域の中間に、もう一か所を計画している。
過疎の村に造ることで地域の活性化が図られ人々の働く場所も増やせるからね。
そんな俺の『わくわくドリームランド』だ。
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俺の名はキャッスル、鍛冶師になって6年。
ずっと親方の下で修行してきたが、最近独立して自分の好きな仕事ができるようになった。
そんなときだ。ハバナの街に子供達の夢見る『わくわくドリームランド』ってものを造ると聞いたのは。
話しを聞けば、こりゃ一つの街を造るつもりだぜっ。とにかく規模がでかいんだ。
コウジ代行がギルドに来て、いろいろ話している中で、孤児院にそういうメルヘンを描いた絵本が何冊もあるって聞いて、出掛けてみたんだが。
絵本を見て驚いた。俺があこがれてた世界がそこにあったからだ。
絵本を描いた少女の名は、ミーシャというんだが、この子の描いた〘お城〙に俺はすっかり魅了されてしまった。
なにせ、外観はもちろん窓や扉、テーブルにイス、シャンデリアに壁掛けの時計、すべてが凝ったデザインで、たまらなく憧憬を誘う。
「ミーシャ、このお城には花とかあるのか?」
「えっ、あると思うわ。そう、壁掛けのこんなのかしら。」
「この壁の絵は額縁がないけど、どうして?」
「あぁ、これは大きな布でできた絵なの。壁に貼ってあるのよ。」
俺は夢中になって聞きまくった。家に帰っても興奮が治まらなかった。
俺はこの《お城》を造りたいっ。今まで見たこともない、夢の世界のお城だ。
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