第34話 真のYOU DIEDへの入口

闇と光のキセキ

 

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【キャラクターデータがありません】

 

 

 あたしは、テレビの前で唖然としていた。

「ナニコレ」

 あまりの仕打ちに、あらゆる語彙が消しとんで、辛うじて出た言葉だった。

 ゲームから受けた理不尽と言うのは、本当に怒りのやり場がない。

 ここまで育て、操作していた悪役令嬢“カレン”と言うキャラクターは、確かに消失ロストしていた。

 ゲームのルール通り、復活に必要なエーテルが不足した状態で死んだので削除されたのだ。

 クッション目掛けてコントローラーをぶん投げた。

 ここまで、何度ボスに殺されても、こんな癇癪は起こさなかったけれど、流石に限度を超えていた。

 後一歩でゲームクリアだった。

 マイルズの目の前でセレスティーナを倒せば、彼の“攻略フラグ”が完成してハッピーエンドの筈だった。

 その、目前も目前で、クソゲーと罵るのも生ぬるい、この無粋。仕打ち。

 セレスティーナを倒した経験もあった。

 最後には勝てる筈だった。

 それが、前回は使って来なかった訳のわからない即死攻撃を持っていた。

 本当に酷いのは、その後の追撃だ。

 ノワール城裏口から、遥か遠く大聖堂の室内まで狙撃が届くなど、設定した人は頭がおかしいのでは無いのか。

 あまつさえ、敵からは不可侵の筈だった拠点の復活ポイントを平気で狙うか!?

 酷い。

 あまりにも酷すぎる。

 あたしは、よろよろと立ち上がると、冷蔵庫からストロングなチューハイをもう3本抱えて持ってきた。

 当て付ける相手も居ないのに、それらを乱暴にテーブルに置いてやった。心が晴れる筈もない。

 クッションに横たわるコントローラーを引ったくるように拾い上げると、怒り心頭ながらも、またテレビの前に腰を落とした。

 わかった。

 こうなれば、意地でもクリアしてやる。

 キャラクターは消えたけど、最初に作った“カレン”の容姿データは残っている。

 あと、次からは、ゲーム機の外付けハードディスクにセーブデータのバックアップをこまめに取ろうと思う。

 死にゲーは、オートセーブが基本で、やり直しが利かないものだけど、今ので完全にキレた。もう、あっちのルールに律儀に付き合ってやるものか。

 

 プシュっ、ともう何本目かわからないチューハイを開けると、景気づけに一気飲みする。

 内臓が明らかに酒の侵入に拒否を示しているけど、知った事か。

 脳ミソ様の権限は絶対だ。五体も五臓六腑も、脳ミソ様には逆らえない。

 一口飲み下すごとに、意識にかかる膜が厚くなってゆく。

 あそこまでの道のりをゼロからやらされるなんて、飲まなきゃやってられない。

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