第3話 素性選び

 闇と光のキセキを始めるにあたり、主人公のキャラメイクを行わねばならない。

 まず、彼女の“素性”を選ばねばならない。

 これによってステータスと装備が決まる。

 あくまでも初期値であるから、例えば騎士として生まれたとしても、これから魔術を極めるも暗殺者に身をやつすも自由ではある。

 素性によって、最終的な有利不利はそれほど変わらない。

 あくまでも、初期ステータスと、一部サブイベントに影響する程度である。

 なお、それぞれの能力値は以下のとおり。

 筋力……斧や大剣など、力を使う武器の威力に影響する

 技量……細剣や鞭など、器用さを要求される武器の威力に影響する

 体力……生命力と頑強さ、装備の許容重量に影響する

 魔性……“聖水法”と呼ばれる、魔術の会得と威力を表す

 神性……治癒など、本来なら“神”にしか許されない術の会得と行使をどの程度許されているか

 業………状態異常の回避や、貴女を生かす因果の働く強さ、いわば“運勢”に影響する

 

 それでは、各素性を順に見ていこう。


教国市民

【筋力:11 技量:13 体力:10 魔性:9 神性:11 業:18】

【貴女には特筆すべき宿業がありません。

 いわば、本来であればモブキャラで終わる筈でした。

 しかし、そんな貴女が此度の神選しんせんを生き残った事には大いなる意味があるのでしょう】

 

村娘

【筋力:14 技量:8 体力:17 魔性:5 神性:15 業:11】

【貴女は栄光ある教国の片隅、忘れられた寒村の生まれです。

 男も女も関係ない日々の野良仕事は、貴女の心身を強くしました。

 そして神は、そんな乙女こそを愛される事でしょう】


女騎士

【筋力:18 技量:11 体力:15 魔性:4 神性:7 業:6】

【武門の名家に生を受けた貴女もまた、必然的に武道を歩む宿命にありました。

 体格で劣る女の身すら、貴女にとっては、更なる武力を求める為の小さな試練に過ぎない事でしょう】


図書館司書

【筋力:5 技量:13 体力:7 魔性:18 神性:7 業:6】

【本来なら、主役が図書館に知を求めた際に少しだけ登場する、モブキャラに過ぎない筈の運命でした。

 数え切れない書物との触れ合いは、この状況下にあって、非凡なる魔力に転じる事でしょう】


正ヒロイン

【筋力:6 技量:11 体力:6 魔性:7 神性:19 業:15】

【身分に恵まれず、人の業に苛まれ続けた、過酷な半生でした。

 しかし、それは全て、神に認められたからこその試練に他ならない。

 神選しんせんの世が到来した今こそ、神は貴女にその、癒しと光の極意をお認めになられる事でしょう。

 貴女こそが、物語の主役に相応しい】

 

取り巻き

【筋力:9 技量:18 体力:8 魔性:12 神性:6 業:14】

【貴女は有力令嬢の取り巻きでした。

 虎の威を借り、今ある環境を巧みに立ち回る生き方は、知らず知らずのうちに間諜かんちょうとしての才能を育んでいたようです】


悪役令嬢

【筋力:6 技量:7 体力:5 魔性:8 神性:4 業:5】

【教国の大司教令嬢。

 貴女にあるのは親の威光と、家柄の権威のみ。

 この神選しんせんの世においては、そのどちらも、最早意味をなさない。

 すなわち低能力者だ。救いようが無い】

 

 

 そんなわけで、今回のキャラメイクが済んだ。

 

氏名:カレン・クレイ

素性:悪役令嬢

装備:

   ドレスソード

   決闘の丸盾バックラー

   上流の衣服

魔法:

   水撃ボール(聖水魔術)

 

 一度クリアした自信と酒の勢いで、最低の素性である悪役令嬢を選んだ。

 縛りプレイでもなければ、選ばれる事のない素性だろうが、多少の歯応えがあった方がかえってモチベーションが続くだろうとも考えた。

 しかし。

 ストロングなチューハイが、早速回ってきた。

 意識にたちまち膜がかかり、現実味が薄れていく。  

 ここ数日連続した嫌な事だとか、明日以降の仕事だとかが、遠ざかっていく。

  ついでに、意識そのものも遠ざかりそうだ。

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