第6話
「倉内様。こちらの素材は、此方でお預かり致しますか?サービスですので、料金などは掛かりませんよ。」
「ああ、お願いします。」
片倉さんの視線を追うと、装備品を着脱する時に邪魔に成ってカウンターに置いたフュルフュールからの品があった。
俺はその提案を受けて、枝角と紅い宝石を透明な衝立の向こうに居る片倉さんに託す。
彼はそれを後ろに控えるマニュピレータへと、手渡し手元のキーボードを操作し始めた。
その操作を受けてマニュピレータが掴んでいた品をコンベアに置いて、コンベアは壁の向こうに品を移動させた。
片倉さんが言うには、備品室に預けられた品は支給されたスマホで確認したり、自室や譲りたい相手に送る事が出来るらしい。
それらの説明が終わり次第、備品室を出てホテル内の自室へ向かう事にした。
「それでは、今日の所は失礼しますね。」
「はい。また何時でもお越し下さい。」
片倉さんに挨拶を終えた俺は小泉さんがいつの間にか開けていた出口を通って備品室を出た。
その後、小泉さん先導の元、自室が用意されている宿泊フロアへと移動を始める。
先ずは、これまで移動に使っていたエレベーターに再度乗り込む為、エレベーターホールへと向かい止まっていた一基に乗り込んだ。
ホテルの低層階にある目的のフロアに辿り着いたエレベーターの扉が、開いたのでその扉からフロアへ出る。
先を進む小泉さんは、エレベーターホールから離れてフロアの端にある客室へと俺を案内して行く。
かなり端の部屋に案内された俺は、室内の設備や清掃なんかの説明を受けて今日の案内は終了となった。
小泉さんの退室後、腰のベルトや装備品を先に部屋へ送られていたそれぞれのケースへ仕舞うと、シャワーを浴びる等の寝支度を行ってベットへと移動した。
部屋は、ベットと壁付の机、クローゼットがある一室でトイレシャワールーム
ピッチリと張られたシーツを完全に引っ張り出し、その隙間へと体を潜り込ませて目を閉じると、緊張等による疲れから直ぐに眉は抵抗を止めて眠りに落ちる。
普段より上質なベットと完璧にコントロールされた空調や騒音の無さでぐっすりと寝た俺が昨日貰ったスマホで時刻を確認すると、平日の起床時国よりも一時間遅く目覚めた。
快調な目覚めと窓から入る日の光に調子良く目覚めた俺は、朝食を摂る為に身支度を行う為、寝間着変わりの肌着を脱ぐと昨夜まで無かった刺青が左胸に刻まれてい
刺青は、フルフルと契約した時に奴の足元で輝いていた魔法陣と同じ模様に見える。
何の気なしに刺青を触って見ると、この刺青により若干の身体能力強化と銃火器の扱いが上達したようだ。
何時までも自分の胸を触っていても仕方が無いので、身支度を行ったが客層が上流の人間だらけのレストランフロアで食事する気に成れなかった俺は、ルームサービスを注文して部屋で待つ事にした。
「失礼致します。朝食をお持ち致しました。」
「其処にお願いします。」
扉のノック音に対して入室の許可を伝えると、カートを押した小泉さんが現れた。
声で予想が出来たいたが、小泉さん程のコンシェルジュが俺に朝食を運んで来ると言う自身の待遇に驚いてしまう。
小泉さんが壁付の机に俺が頼んだロールパンとバターが入った籠やスクランブルエッグ、ソーセージ、サラダ、が盛り付けられたプレートにポタージュスープ入りのカップを並べてくれた。
「他にご入用の物は御座いますか?」
「朝食は、これで十分ですよ。あっ。今日中にしたい事だったり、今後の相談があるので後で時間を貰えますか?」
朝食を並べ終えた小泉さんからの質問に自分の希望を伝える。
「承知致しました。お食事が終わりましたら再度及び下さい。」
「分かりました。あっ。頂きますね。」
俺の言葉に一礼して去って行く小泉さんの背中を見届けた俺は、目の前の食事にありつく。
ふっくらとしたロールパンは、齧り付くと小麦の柔らかな食感とほのかな甘みを感じられ、バターをヘラで塗る事で塩味とコクが加わり更に味わい深くなる。
ボイルされたウインナーは、歯でパリッとした皮を突き破ると口内に溢れ出す熱い肉汁が旨味の洪水を起こす。
スクランブルエッグは、俺の注文通り少し固めの焼き加減となっており、フワフワしているが食べ応えがある。
三品を一口ずつ味見した俺は、オリーブオイルと岩塩にコショウと言うシンプルなドレッシングが掛かった新鮮なレタスとトマトのサラダで口内をリセットする。
そして、適温に成ったポタージュスープを飲むと、滑らかな舌触りとジャガイモと牛乳の柔らかな風味が身体の芯を温める。
一通り味わった後は、手が進むままに食べ始め全てを平らげるのに左程、時間は掛らなかった。
食事を終えて人心地着いた俺は、小泉さんに食器を下げて貰う為に連絡を入れた。
待機していたのか直ぐに俺の部屋の扉がノックされ、小泉さんとホテルの従業員が現れた。
「小泉さん。朝、言った相談事なんですけど、俺が悪魔から貰った二つの素材を加工して装備したいんですよ。」
「成程、素材の加工であれば幾つかご提案出来ます。どう言った物をご所望でしょうか?」
従業員の男性が食器を引き上げる中、俺は小泉さんに相談を持ち掛けると彼は直ぐに返答を返して来た。
「石は、モンスターなんかの魂を収集する為の道具に加工したいです。角は武器か装備品にしたいですね。初任務の前に石だけは加工して手元に欲しいです。」
「かしこまりました。あの石ですと、アクセサリー等の装飾品や武器等にお使い頂けますね。私のオススメですと、アクセサリー等が加工の手間が少なく、身に着けやすいので良いかと思います。角は武器や防具以外にも攻撃的な魔導具の素材に出来そうですね。」
小泉さんの提案を聞いて俺は少し考えてみるが、アクセサリーを身に着ける習慣が無いのでどの様な物が良いか思いつかない。
「武器に使用する際は、部品に加工したりするのですか?カットして嵌め込んだり。」
「そうですね。その様に使う場合が多いですが、他の利用方法として錬金術を用いてどうかさせる事もあります。特殊な鋼材を作り出し、銃や刃物に打ち直すのです。」
小泉さんの話を聞いた瞬間、脳内に刀身が赤みがかった鉈のイメージが浮かびそれ以外に考えられないと思った。
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