2部 サリア教皇救出戦と神奉の儀式

第72話 サリア教皇救出戦 勝つ丼で開幕

(ラペシュ視点)


「頭を垂れて蹲え...平伏せよ。」


ここは大教会。ラペシュ大司教は、本日中に乗り出すであろう8人の愚か者を迎え撃つため、6人の精鋭を呼び出した。


「はっ。我ら、ヴォルガ六神徒ここに揃いました!」


「して、今回は如何のご要件で?」


6人はそれぞれレベルが90以上の精鋭達であり、神降祭で神の降臨した姿として宣教する対象となっている。


「ジュネ、ヴァニタ、ダビ、ギル、ゴーア、ガルザ。お前達には、アリアの捕獲と『女神の家』という障害の排除を命ずる。各地、持ち場につけ。全ては神の名のもとに!」


「「「「「「全ては神の名の下に」」」」」」


ヴォルガ六神徒はラペシュ大司教の命により、それぞれの戦場へと駆けつけた。


「そうだ。アリアの下へはお前を行かせるとしようか、サリア教皇、いやピューよ。」


◇◇◇


異世界12日目。僕達は今日、サリア教皇救出、そしてラペシュ大司教を倒すために大教会へと突撃する。そのための朝食として、今回は受験生の間で勝つとお馴染みのあのメニューを創ることにした。


「<創造魔法:カツ丼>。」


僕、ツカネ、アカネ、チヒロさん、シラユキ、ソール、アウラ、アリア、マリアの9人分ではなく、20人分を創り、振る舞った。内訳は


僕×2


ツカネ、アカネ、チヒロさん、シラユキ、ソール×3


アウラ、アリア、マリア×1


である。ここで、白飯の普及化ノルマも達成しておこうと思ったのもこのメニューを選んだ理由の1つであることも追記しておく。


ガツガツガツ


女神様~ズは今日も大食らいいつもどおりである。ああ、もう2杯目を食い終わっているじゃないか!


「アウラ、この白き宝石は何でしょうか?」


「これは白飯という食べ物だよ。イチロウくん達はこれを世界に普及し、世界中の貧しい者達を救済するために日夜、励んでいるんだ。」


「何と素晴らしいのでしょうか。イチロウ神様は偉大!こことは比べものにならない程の救済を与えんとするその後光!このマリア、一生を尽くしましょう。」


すると、ファースト米は目をキュピーンッと光らせ、マリアの所へと向かった。


※これにより、マリアのILLROへの入信かにゅうが決定しました。


そして、アリアも同じように白飯という偉大に触れ、天へと祈りを捧げている。


「私、イチロウ様が私の『生涯掛けて信仰すべき神デイアティ』である理由がはっきりと分かった気がします。」


「ふふ、そうだね。アリア、君もこの戦いが終わったらイチロウくんの下へ来るかい?というより、アリアにとってはもうそれが運命だと思うけどね。聖国の掟に従うと、そうなってしまうし。」


聖国の掟にはこんなことが記されている。


第1項:聖女は純潔を守り、決して穢れてはならない。そして、その身を捧げし相手は、天が定めし神のみであり、その者以外では決して肌を許してはならない。


第2項:教皇となる場合、聖女から外れ、次代の聖女を創るべし。


つまりは、聖女となった女性は信仰に励み、徳を積むことで教皇となり、新たな聖女を育てるのが通常であるのに対し、天が定めし神、すなわち<聖女の囁きセイント・ウィスパー>の対象となる神が現われた際はその者に嫁ぎ、神の寵愛を受ける必要がある、ということ。


そして、アリアの言う『生涯掛けて信仰すべき神デイアティ』とは、この聖国において『夫、伴侶』という意味を示す用語であるのだが、イチロウは当然知ってはいないし、ある種の強制ルートに突入していることもまた然りである。


「いっくん。まだまだ足りない。」


「お兄ちゃん、もっと頂戴。」


「おかわりじゃ。」


「後1杯、いただけませんこと。」


チヒロさん以外はおかわりをご所望であるため、念入りにカツ丼を2杯ずつ追加で創った。お前達、少しはチヒロさんみたいに


「すみません、イチロウさん。カツ丼の方を後5杯、創っていただけませんか?」


感動を返して...。


◇◇◇


大教会。それは、聖国の中でも一番に大きい建造物であり、プロスペリア王国の王城の聖国バージョンといった所である。


「相変わらず、ぼくの王城くらいに大きいよ。」


アウラの言う通り、その大教会は近づけば近づく程、その大きさが伝わってくる。そして、その前には多くの人で賑わっていた。


「それでは、マリア。私は、行って来ます。」


「はい。聖女様。皆様もどうかご無事で。」


マリアは昨日のポイズンコブラゾンビのダメージがまだ残っているため、大教会の前で一旦、お別れとなった。


「それでは、参りましょう。目指すはこの大教会の地下です。大聖堂の一角に隠し階段があり、その奥にラペシュ大司教は確実にいるでしょう。」


僕達は全員、<隠蔽>を掛けて大教会に潜入した。アリアの指示に従って、大聖堂へと行き、その隠し階段へと差し掛かる。そこを降りると、僕達の前に7つの通路が現われる。


「わぁー、分かれ道だねぇー。」


「<最上級索敵>。どうやらそれぞれの通路にボスがいるようです。」


「つまり、各個撃破しないと先に進めない可能性も否めないと。」


「ならば、妾、婿殿、ツカネ、アカネ、チヒロ、ソールは1人ずつで良いとして」


「アウラさんとアカネさんは如何しますか?一応、相手はお二人よりは高レベルですわよ。」


アウラとアリア。勇者と聖女は悩んだ末、


「ではぼくとアリアの2人で組む事にするよ。」


「ええ。その方がいいでしょう。皆さん、この先は7つに続いていますが、先に進めば合流出来るはずです。そこで落ち合いましょう。」


僕達全員は、互いに頷き合い、各通路へと向かった。

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