第37話 ランクアップ試験 ダンジョン試験~狂戦士による破壊活動を添えて~

先ほどから悪い予感をしているイチロウです。主に狂戦士ツカネとアカネ関連で。


さて、僕は現在、2階層にいて、シラユキの指示した道を進んでいます。ただ1階層と違うところは、罠が多く出るようになった点で、<アーススピア>で床のスイッチを押したり、<アースドール>を使って探知させたりしながら進んでいった。途中では、<創造魔法:アキュウエリアス>を3人分用意して水分補給も行うなど、体調の面も考慮していった。


「この飲み物、美味しいよ。どこで手に入れたのかな?」


「あ、すみません。これは僕でしか創れない飲み物でして、もし良かったら希望の本数出しますよ。」


アウラ曰く、冒険者は食べ物よりも水分の方を重要視するらしく、食べ物の場合、匂いで魔物が寄ってくるのだと言う。だからこそ、途中でお腹が空いた場合は無臭の固形物で済ませることが多く、その味は非常にまずいらしい。


安全第一を意識するのは良いが、僕はまずいものを食べてでも徹底したくはないなぁ。


「婿殿。右の通路の方にリザードマン1体がいる通路がある。そこが一番危険性の少ないルートじゃ。」


OK。右の通路ね。参考までに聞くけど、左の通路は何故、選ばなかったのかな?


「うむ。左だと、ゴブリンの集団がおった。体力面の消耗を考えれば、リザードマン1体の方がまだマシじゃろうて。」


魔物の集団。それが一番危険であることも冒険者の常識だ。ただの集まりならいざ知らず、司令塔となる存在がいる場合は厄介で、魔物なのに統率した動きをする。それにより命を失う冒険者も中には多く存在するため、魔物の集団を見かけたらなるべく回避するのが冒険者の間の暗黙の了解となっている。


こんな時、狂戦士めがみたちならどう動くのだろうか?頼むから殲滅という選択肢をとらずに、回避してくれよ。


そう願いながら、僕はリザードマンを首チョンパして3階層へと進んでいった。


◇◇◇


(アカネ視点)


「<付与エンチャント:ウインドアロー>。1000発ブチ込みますよ。えいえい。」


2階層についたアカネは魔物の集団を探索で感じ取ったはいいものの、そこから一気に矢を放って殲滅を図っていた。担当冒険者は半ば諦め、むしろ魔物の大量討伐で得られるボーナスのことを優先的に考えてアカネの破戒すべき全ての基本ベーシック・ブレイカーを応援していた。


「凄いですよ、アカネさん。リザードマンの群れが瞬く間に殲滅し、さらに心臓を一発で射貫いています。素材と討伐部位を合わせると、グフ、グフフフフ。」


担当冒険者がトリップしている間も、アカネは1発、また1発と矢を放ち、ダンジョン試験よりはボーナス稼ぎの方を優先的に狙っていた。


「本当にチョロいですね。人というものは。」


追伸。アカネは確信犯だった。


◇◇◇


(ツカネ視点)


「粉砕。玉砕。大喝采。強靱。無敵。最強。魔法があれば何でも出来るのは世の理。キミも3属性持っているんだ。遠慮無く使うといいよ。」


「サーイェッサー。」


魔物の集団を風属性魔法により切り裂いていった惨状を前に、ツカネは担当冒険者に魔法の偉大さを説いていたせんのうしていた。これにより、また一人、魔法厨という名の狂信者が誕生したのであった。


「フッ。チョロい。魔法の凄ささえ見せてしまえば所詮、こんなものなのだよ。人というものはね。」


速報。ツカネは洗脳、アカネは金欲と、2人の姉妹は着眼点は異なるものの、担当冒険者を買収するという点で全く同じことを考えていた。


◇◇◇


僕は現在、3階層にいます。あの後、リザードマン1体を討伐してからは罠の破壊というイベントしか起こりませんでした。まぁ、シラユキによる索敵があるからなんだけど。


「さて、パッパッと片付けますか...。」


僕の目の前には目的のファイアリザードマンが立っていた。


ファイアリザードマン

HP 1,200/1,200

MP 1,200/1,200

攻撃力 1,200

防御力 1,200

硬い肌が特徴のトカゲだが、<火属性魔法>により炎を纏っている。その肌は素材として取引されていて、<水属性魔法>により炎を消してから倒すことで手に入れられる。討伐部位は尻尾の角。


気になる説明は、素材の獲得方法である。普通なら首チョンパか<威圧>で倒せるかも知れないが、それでは素材を取ることはできない。よって、僕は<水属性魔法>で頭上に水をつくり、


「<ウォーターフォール>。」


ファイアリザードマンに水をぶっかけた。すると、体を覆っていた炎は消え、ただの色違いのリザードマンへと変化した。


グォォォォ!


抵抗として、口から<ファイアボール>を放ったが、水により弱体化しているためか威力やスピードは弱々しかった。よって、僕のリザードマンと同様に、首チョンパをして討伐を終えた。


「ご苦労様、イチロウくん。後は、入り口まで戻るだけだよ。ああ、それとダンジョン試験については満点中の満点だ。獣魔の使い方、行動の正確さ、そして体力面の管理を怠らない点では素晴らしいの一言さ。」


それはどうも。僕も意外と楽しかったし、久々にリフレッシュできた。さて、後は討伐部位を回収して...!?


その時、床から魔方陣が浮かび上がり、一瞬で僕とアウラは何処かへと転移させられた。

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