第61話 共闘
襲いくるアランの剣に対してルークも剣で対抗する。剣と剣が衝突して凄まじい音を立てる。一瞬の拮抗のあと次第にルークは押されていく。しかも剣にヒビが入りルークが押し負ける前に剣が壊れそうであった。
アランの剣を受け止めている間、ヒビはどんどんと広がっていきやがてルークの剣が折れてしまう。幸いな事にアランの剣はルークの体を切り裂くことはなく空を斬る。
一度トラヴィスの刀の遺物が壊れるのを見ていたとはいえ実際に自分の剣の遺物が壊れるのを目の当たりにしてルークは唖然としてしまう。剣と一緒に心まで砕かれたのではないかと錯覚してしまうほどだ。
遺物が万全な状態でも勝てる気がしなかった相手に対して折れた遺物で勝てるわけがない。ルークが諦めかけたその時、空から何かがアランに向かって降ってきた。
「諦めるのか? 剣の遺物使いよ」
落ちてくる何かをアランが避けると何かが立ち上がりそう語ってくる。砂埃が晴れていきその何かが姿を現す。それは魔族のトップのひとり角鬼種のコスタスであった。
「剣の遺物使いよ。お主にはフレイヤの件で借りがある。我が一族を玩具のように扱ったフレイヤに裁きを与えれたのもお主のおかげだ。ここは一つ共闘といこうではないか」
「私も協力するわよ」
コスタスの言葉と共に現れたのはエリザベスであった。赤い槍を構えながらコスタスの横に並びアランへと視線を向ける。エリザベスはアランが敵である事に少し驚いた表情であったが直ぐに真剣な顔へと戻った。
「敵同士であるはずの人類と魔族の共闘か。面白い……返り討ちにしてくれる」
アランは笑みを作り二本の剣を構えた。
ここで諦めている場合ではないとルークは思い剣を再度構える。折れていたはずの剣はいつの間にか修復され元の状態へと戻っている。
全員が臨戦体勢となり戦闘が再開される。最初に動いたのはコスタスであった。
手に持った棍棒をアランへと振り下ろす。だがアランの剣により棍棒は斬られて直ぐに使い物にならなくる。アランはさらにコスタスを斬ろうとするがエリザベスの槍がアランに向けて飛ばされる。コスタスへの攻撃を一旦やめたアランはその場から大きく離れて槍を回避する。回避した場所に先回りしたルークがアランへと切り掛かるがそれは剣により防がれた。
ルークとアランの攻防が繰り返されるなかルークの剣にヒビが入るがヒビが入ると同時に修復されていく。剣を破壊される心配は無くなったが力では相変わらず押し負けていた。
エリザベスとコスタスの援護のおかげで辛うじて打ち合えてはいたが防ぎきれない斬撃によりルークの鎧が少しづつ剥がされ傷をおっていた。このままではやがてアランに押し負けてしまう。
「諦めるにはまだ早いぜ!」
少し離れた場所からマークの叫び声が聞こえた。右手を失いバランスが取れないのかふらつきながらマークは左手に鎌を持ち立っていた。
「コスタス!」
マークがコスタスの名前を叫ぶと鎌を投げた。投げると同時にバランスを崩して地面に倒れる。投げられた鎌はコスタスに向かい投げられる。突然の行動に驚愕する一同であったがコスタスだけはニヤリと笑い鎌に向かい駆け出した。
コスタスに鎌が刺さると鎌はコスタスの体内へと飲み込まれていき、やがて鎌は完全に飲み込まれてしまう。
「これが遺物の力か……。通りで勝てないわけだ」
コスタスがそう呟くと地面を蹴った。瞬く間にアランへと近づき彼へ向けて拳を放つ。放たれた拳にアランのガードは間に合わずに腹へ拳がめり込み彼を吹き飛ばした。
数メートル吹き飛んだ所で止まりアランは血を吐いた。初めてアランに対してまともなダメージを与える事ができた。
「時間はあまりない! 一気に畳み掛けるぞ!」
コスタスの言葉にルークとエリザベスは頷きアランへと攻撃を始めた。今まで焦った表情を一度も作っていなかったアランが顔を歪めた。
エリザベスとルークがアランの隙を作りその僅かな隙をコスタスが攻撃する。何度もコスタスの拳を喰らったアランはやがて膝をついた。
「ここで負けたら全てが終わりだ……」
剣を地面に突き刺し荒い息をしながらコスタスを睨みつける。コスタスはそれを気にせず拳をアランへ向けて殴りかかった。
真っ直ぐにアランに向かい放たれた拳であっが彼へ当たる前に地面に落ちてしまう。アランに拳が届く前にコスタスが倒れてしまったのであった。
「時間切れか……」
地面に倒れ込んだコスタスがそう呟いた。膝をついていたアランは立ち上がり倒れているコスタスに向けて剣を振り上げる。
「もう少しで負ける所だったよ」
アランはそう言って振り上げられた剣を振り下ろすのであった。
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