第33話 地下探索

 翌日とは言っても太陽が見えない地下では正確な時間がわからない。そんな中ルークとエリザベスは地下の探索のために準備を終える。


 出口を探して二人は歩き始める。途中で再び人形と遭遇したが気付かれないように隠れてその場をやり過ごした。


 歩き始めて数時間が経過したが結局出口への手がかりは見つからないまま時間だけが過ぎていた。


 食糧も水も心許ない状況で焦りを感じつつ辺りの捜索をする。食糧はまだしも水は底をつきルークは危機的状況になっていた。


 一旦休憩を挟みエリザベスは持っていた食糧と水分の補給を始める。どうやらルークより余裕があるようだ。


「水分補給はしたほうが良いわよ?」


 エリザベスが善意からかそう言うがルークは口ごもりながらそれに答える。


「……もう水が無いんだ」


「なら、これを飲みなさい」


 エリザベスはさっきまで自分が口をつけていた水袋をルークへと差し出す。ルークは魔族から施しを受けるのに抵抗があったが彼女はそんなルークを無視して無理矢理水袋を渡す。


 迷いながらルークは水を口にする。喉が渇いていたルークにとってそれはとても美味しい物であった。


 水分補給も終えて再び二人は探索を始める。


 探索を再開して暫くすると人工的に作られたであろう壁に穴が空いている所へやってきた。穴は人が通れるほど大きく穴の奥は自然の洞窟のようになっていた。


「この先から水の流れる音が聞こえるわ」


 エリザベスがそう言うと穴の中へと入っていく。ルークもその後に続いて穴へと入る。暫く歩くと洞窟の中に川が流れていた。川の周りはかなり広い空間となっている。


「これで水の問題は解決ね」


「あぁ、それに魚も居るみたいだぞ」


 ルークが水面を覗き込むとそこには魚が群れをなしていた。エリザベスもそれを確認すると血の槍を出して魚へと放つ。槍は魚を貫通して見事捉える事が出来た。


「燃やせそうなもの探してくる」


 ルークが魚を捕らえた事を確認してから焚き火のために燃やせる物を探す。川のほとりに乾いた流木を発見しそれを持ち焚き火の準備をした。


 火を起こせる魔道具を使用して焚き火を起こしエリザベスが取った二人分の魚を焼く。魚からは良い匂いが漂い始め美味しそうに焼け上がった。


 焼け上がった魚を食べながらエリザベスは話し始める。


「恐らくこの川は外に繋がってるわ。証拠にこの魚、目が退化してないもの」


 エリザベスの言った通りルーク達が食べている魚は一般的な川で見かける魚であり、洞窟に住むような魚ではなかった。


「川を上るか下るかして脱出を目指しましょう」


 地下遺跡から脱出の目処が立ちほっと一息入れた瞬間ルークの視界の端、エリザベスの後ろから赤い光が発せられる。発せられた赤い光から光線が放たれる。


 その光線にエリザベスは気づいた様子はなくルークは咄嗟に遺物を出しながらエリザベスを突き飛ばした。


 突き飛ばされたエリザベスは光線を避ける事が出来だがルークの脇腹に光線が掠める。光線により右脇腹が焼けて痛みが走るが歯を食いしばり我慢をして手に持った剣を赤い光を発している人形へと投げる。


 投げられた剣は一直線に人形へと向かいその赤く光る顔へと直撃する。直撃した剣は深々と刺さり人形は音を立てて崩れ落ちた。


「大丈夫? 遺物使い君?」


 突き飛ばしたエリザベスは心配そうにルークへと駆け寄る。ルークは痛む脇腹を抑えながら平気な顔をする。


「問題ない。それと俺の名前はルークだ」


 今まで名前を名乗っていない事に気がついたルークは改めて名前を名乗った。敵であるエリザベスに名乗る必要も無かったのかもしれないが何となく名乗らずにはいられなかった。


「ルークね。名前覚えたわ。それよりも、早く患部を冷やしましょ」


 エリザベスはルークを先導して川へとやってくる。川で患部を冷やすと多少痛みが治まる気がする。


「私のせいでごめんなさいね」


「気にするな。ここに落ちた時に助けられてるしな」


 患部を川で冷やしながら二人は会話をする。本気でルークの事を心配している表情をするエリザベスにルークは複雑な思いを抱く。


 敵である自分達は一体何をしているのだろうか。そんな疑問がルークの頭を支配する。


 痛みも引いて問題なく動けるようになったルークはエリザベスと共に川を下り外を目指した。


 遺跡内部と違いこの洞窟内ではあれから人形を見る事はなく安全に進む事が出来た。しかし、川は途中で途切れていた。


 もしかしたら潜れば外へ繋がっているかも知れないがどれほどの距離があるかも人が通れるサイズなのかも分からないため水中を探索する事も出来ない。


「今日はここまでにしましょうか」


 エリザベスの意見に賛同してルークは夕食の準備を始めた。川で魚を取りそれを焼いて二人で食事をする。


 食事中は何となくお互いの故郷の話をする。たわいもない花畑や森、そこに住む動物や人々の話。ルークはより魔族と人類の違いがわからなくなる。


 雑談も終わり交代で見張りをしながら就寝する。昨日よりぐっすりと眠れた気がしたルークであった。


 

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