第17話 帝国へ

「私は魔法科の学生でリア ジョーンズって言うの。リアって呼んでね」


 帝国行きの馬車に乗ったルーク達は自己紹介を行なっていた。私服姿で気が付かなかったがリアは騎士学校では珍しい魔法科の生徒であった。


 ルークは魔法使いとあまり関わった事がなかった。実家にいた時はもちろんの事、騎士学校に来てからもほとんど話したことも無かった。その為、ルークは彼女に興味津々であった。


「そんなに見つめられると恥ずかしいです」


  顔を赤らめたリアは両手を頬に当てて照れ笑いをする。ルークは見つめていた事に気がつくと直ぐにハッとして目線を逸らす。


「ごめん。魔法使いが珍しくって」


「なるほどですね。確かに魔法使いの才能がある人はほんの一握りですからね」


 彼女の言う通り魔法使いの才能がある人は少ない。魔法使いになる為には魔力と言われる体から発せられる存在を感知出来る事、そしてそれを動かす事が出来る必要であった。それら二つは誰かから教えて貰う事が難しく、幼い頃から自然と出来ていた者が魔法使いになる事ができるのであった。


「魔力ってどんな感じでどうやって動かしているんだ?」


「どんな感じって言われても困るけど、もやもやした感じですかね。動かし方についてはもっと難しくてどうやって腕動かしてる? って聞いてるものかな」


 リアの解答を聞いてやはり魔法使いは限られた人しかなる事は出来ないのだなと再認識した。

 魔法使いへの興味は衰えずにルークは更に質問をする。


「ちなみに魔法ってどんな物があるんだ?」


「簡単な物ならお見せしますよ」


 そう言うとリアは人差し指を立てる。「炎よ」という掛け声と共に人差し指の先に蝋燭の火程度の火が灯る。その光景にルークは驚いた。


「凄いな。火出したり出来るって知ってたけど実際に見ると本当に凄いや」


「そんなに褒められると照れますね」


 指先の火を消したリアは照れたように笑い頭を掻く。そんな光景をミカルは呆れた目で見つめていた。


「魔法使いよりルークの方が珍しいだろ。遺物使いなんだから」


 ミカルの言葉は正しく、王国にはルークを含めて二人しかいない遺物使いは魔法使いと比べて圧倒的に珍しい。


「ルークは遺物使いだったのですか!」


 ミカルの言葉を聞いたリアは興奮気味で体を乗り出してルークを見つめる。さっきまでと立場は逆になりルークはリアの気持ちがわかった。


「あぁ、遺物使いだよ」


 ルークははにかみながらそう言った。リアの興味は尽きる事なくキラキラした目でルークを見つめる。


「見たいです!」


「これが俺の遺物だ」


 ルークは亜空間から剣の遺物を取り出す。馬車の中はルーク達3人しか居らスペースもあったため剣を出しても余裕がある。

 リアの視線はルークから剣へと移りまじまじとそれを見つめる。彼女は見つめ終わると元の席へ座り直りた。


「変な形の黒い剣ですね」


「他にも形態があるけどここだと危ないからまた今度ね」


「楽しみに待ってます」


 リアといつか剣の赤形態を見せる事を約束しているとミカルが口を開いた。


「ところで、やたらと荷物が重かったが何がはいってるんだ?」


 確かにミカルが蹌踉めくほど重い荷物の中身が気にならないこともなかった。

 ミカルの発言にリアはいやらしい笑みを浮かべてミカルを見る。


「女の子の荷物の中身を聞くなんてミカルはエッチですね」


 リアの言葉を聞いてミカルは額に青筋を浮かべる。今にも怒り出しそうなミカルをルークが宥めているとリアは更に口を開いた。


「って言うのは冗談で、魔道具を持って来たのです。帝国は実力主義の国らしいのでもしもの時のための武器は必要かなと」


「戦いに魔道具を頼るなど三流だな」


 先ほどのリアの発言にご立腹なミカルは冷たく言葉を放つ。


「けど、魔道具って便利ですよ。誰でも使えるし」


「そのかわりに魔法ほど威力も応用性もないだろ?」


「それでも便利な物は便利です! ルークならわかってくれますよね」


 今にも喧嘩が始まりそうな二人を宥めようとしていたルークに矛先が向けられる。ミカルとリアに見つめられてルークの意見を求められる。

 日常生活で魔道具とは関わりがあったルークだが戦いに使うと言う発想はあまりなかった。魔力を感知できない人間では魔力がいつ切れるのか分からないし、出来る人間は魔法使いになった方が強い。その為ミカルの意見が正しい様な感じがした。


「便利なのは分かるけど、やっぱりそれは日常生活の中だけかな」


「ルークもそっち側ですか。いいですよ戦いになったら魔道具の力見せつけてやる」


 リアは拗ねた様に唇を尖らしながらそう言いそっぽを向いてしまう。


 無表情のミカルに拗ねたリア、それと困った顔をしたルークを乗せた馬車はゆっくりと帝国へ向けて歩みを進めていった。






 帝国に向かいそれなりの日数が経過して三人がある程度仲良くなった頃、遂に帝国の騎士学校へと到着した。


「ここが俺たちの留学先、イノムリラ騎士学校か」


「俺たちの留学先ってそんな名前だったんだ」


「ルークはもう少し色々と気にした方がいいぞ」


 そんな会話をルークはミカルとしていると案内役であろう帝国人がやって来てそれぞれ今日からクラス寮へと案内された。

 

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