リバーシブル

意味不明なことを口にしながらドアを開ける男。想像した通り、冷たい風に混じってカビ臭い空気が───いや、暖かくて…これは、お香、か?


あのドアは、立派な金属製のドアに変わっている。中は広いとは言えないが、いわゆる唐風のテーブルを始め、外国の調度品が所狭しと、しかし整然と並んでいる。


無論空調は効いているようで、冷たい指先が解けていくようだ。あれ?俺の見ていた掘立て小屋はどこにいった?


「なぁ…ここ」

「ああもちろん、君のドン引きしてた掘建小屋だとも。ほら」


出てごらん、と招かれ、それに従い俺は外に出る。そこには先ほどの、ボロいドアがそのままにある。別にすり替わったわけでもなく、変わらず木製なのである。

つまり、あの木製の面の裏側に、金属の面がある、のだ。


いや、どちらかと言うとあの金属のドアに、ボロボロの面を貼り付けているのだろう。


「カモフラージュだよ。誰もこんなボロボロの家に強盗なんか来ないだろ?」


肩をすくめ、得意げにいう男。ささ、上がって、とまたドアを開けるヤツに、思わずため息を落とす。

やっぱり、この家はどこまでもコイツらしい。



俺が通されたのは、受付のような玄関、ではなく、その奥にある居間。畳が敷いてあり、テレビがあり、冷蔵庫の横にはキッチンもある。見かけは全く一般家庭のそれであった。

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