第9話

 3日の謹慎期間を終え、スマホの返却を受けた俺はミナミといつも落ち合っている喫茶店に向かった。

 目的の人物はいつもの場所に座り、オレンジジュースを飲んでいた。

「よっ、久しぶりだな」

「遅い!」

 可能な限り急いだにもかかわらず、いつも通り詰られてしまった。

「こっちだって大変だったんだぞ?謹慎中なのに職業倫理臨時委員会とか言う会議に引っ張り出されて証言させられたり」

「あれは面白かった。あそこにいた何人かは間違いなく君が黒だって気づいただろうね」

「見てたのかよ」

「全校に中継されてたよ。ボクは天崎の処遇で賭けを募集したんだけど成立しなかった。あいつ嫌われすぎでしょ」

「で、ガムの件はどうなったんだ?先輩の推測が正しければ黒幕は天崎だろ?」

「それに関しても解決さ、情報屋曰く天崎は独自の仕入れルートを持っていたわけではなく押収品を売り捌いていたらしい。必然的に賞味期限は迫ってたり切れていたりして顧客受けも良くなかったみたいだね。だから風紀委員会から追い出された天崎はこれ以上ボクらの邪魔はできないよ。新しい班長にも天崎をマークさせるって約束させたしね」

「その件なんだが…」

「遥のことかい?」

 ミナミには俺が何を気にしているかもお見通しらしい。まあ、気にしていないと思う方がどうかしているか。北方遥、風紀委員長にして情報屋。より大きな不正を潰すために小さな不正は見逃すと言い切ってみせた異色の委員長。

「遥は昔からの知り合いでね。でも知り合いだからって手加減してくれるやつじゃない。遥の正義感は怪物だ」

 なんとなく感じてはいた。北方のミナミに対する態度は旧知の人間に対するそれだった。

「でも今回は手を結んだんだろ?」

「ああ、強制執行班を弱体化する代わりに生徒間の小さな不正はボク達が潰さなくちゃいけないらしい。教職員会からの圧力で見せしめのための無意味な検挙をさせるなって脅されたよ」

 いかにも言いそうだった。それも笑いながら。

「そう言うわけだから、これからもボク達以外の不法行為は一切許さずやっていこう!」

 

 対抗組織への攻撃、治安当局との癒着、縄張り内の治安活動、ミナミ商店はいよいよ犯罪組織じみている。

 今日もコーヒーは苦かった。

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ミナミ商店は今日も無許可で営業中 池堂 @smek1

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