第6話
俺が向かったのは校舎から遠く離れた場所に設置された第2図書館に置かれた忘れられた自動販売機であった。
忘れられた自動販売機というのはあくまで生徒の間での言い方で実際は商品の補充もされている現役の自動販売機だ。ただ、利用者が少ないのは事実であり補充の頻度も低い。
俺はその自動販売機で、水を購入した。支払いは現金。そしてお釣りが出てくるのを待つ。
俺の取引手法は目立たない自動販売機の釣り銭で代金の引き渡しを行い、代わりにガムを置いていくというものだ。足がつかないように毎回違う自動販売機を指定している。
いつも通り、受け渡し用のガムを手に釣り銭受けを除いた。
ない。
そこにあったのは、自分が支払った分のお釣りだけだった。
まさか、指定した自販機を間違えた?顧客が来れなくなったか?
予想と違うことが起きたことで、一瞬周囲の情報が入らなくなっていた。
気がついたときには、すでにだいぶ間合いを詰められていた。相手は規定通りの制服に身を包み腕には腕章。間違いない、風紀委員会だ。
釣りの回収を諦めて、走ってくる相手に向かって突進した。
このタイミングで風紀委員会が現れるということは罠を張られていたと考えるのが普通だろう。であれば襲われた方向と逆側に逃げたら挟み撃ちにされるリスクがある。ここは、相手に突進して逆方向に逃げるのが安全だ。
まさか、突進してくるとは思っていなかったのだろう。風紀委員が怯んで態勢が崩れる。その隙を突いて横を走り抜けた。
「北に逃げた!配置変更だ!」
通話がつながっているのだろう。視界の先で何人か人影が動いたのを感じた。
経験が浅いのか、あまり身のこなしは良くない。突破しようと歩幅を合わせた時、正面の風紀委員が互いに手を繋いで道を封鎖した。
「暴行の現行犯になりたくなければ諦めろ」
後ろから声をかけられた。先程の風紀委員だ。
迷っている間にも別の場所に控えていたらしい腕章をつけた生徒がわらわらと集まってきた。
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