2-13

 家に帰って、ソファの上で横になって考える。

 辻井と、まだ仲の良かった頃。

 俺達は他の数名の男子と、よく一緒に遊んでいた。

 そいつらは皆クラスの中の……いわゆる不良であり、はみだしものたちだったと思う。

 今になって思うのは……。

 あの頃何故俺は、そういう奴らと一緒に居ることを選んだのだろう?ということだった。

 別に、特別相性が良かったとも思えない。太知と居る方が、ずっと気楽だ。

 多分あいつも……辻井も、似たように感じていたのだろう。

 俺と辻井はいつしかそのグループを離れて、二人だけで遊ぶようになったのだった。

 他のやつらは皆、やたらと隣町に行きたがった。

 この田舎に居るのを、嫌がった。

 ……辻井の父親は、隣町に住んでいるらしい。

 俺は、辻井と二人になってからそれを聞いた。

 と言っても、”元”父親だという話だが。

 離婚、したらしい。

 そこら辺、俺と少し似たところがあったのは事実だ。それを俺も、内心少し感じていた気がする。

 だが……決定的に違ったところがあった。

 あいつはいつも父親のことを、疎ましく思っていた。それでそいつの住む隣町自体にも、その感情を向けていたのだろう。

 だが俺の方はそうじゃなかった。

 そもそも俺は、元の両親の事を全くと言っていいほど覚えていなかった。

 それゆえに疎む気持ちも、恨みのようなものもなかった。

 それでも確かに、隣町をいいように思っていなかった時期はあった。

 この町に来たばかりの頃は、あっちにも行きたがらなかった。

 けどそれも、ずっとそうだというわけじゃなく。辻井と遊ぶようになったころには、気持ちはほとんど薄れていた。

 そのうち俺は、隣町に赴くことに抵抗が無くなっていた。

 そのことを、辻井は知らなかったんだろうけど。

 ある日。

 俺は、辻井を遊びに誘った。

 それは、隣町に行こうというものだった。

 俺はそのとき、すっかり忘れていた。辻井が、それを受けるはずがないということを。

 言った直後に思い出した俺は、しかし楽観的に考えた。

 別に、一回くらい行ってみてもいいだろう。

 しかし返って来た返事は、強い拒絶と非難だった。

 かくして俺は、あいつにとっての裏切り者となり。

 辻井との仲も……終わりを告げたのだった。


「…………」


 一気に回想して、一息つく。

 体をソファに沈み込ませて、今度はぼーっと、さっきの事を思い浮かべる。

 青八木が、あの時選択したことを。

 そして俺は、改めてあの時の自分の事を考えた。

 普通に、隣町に行けるようになった。

 それはやはり間違ったことをしていたつもりはない。

 けど、もしかしたら俺は……。

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