第50話 昨夜はお楽しみだったわね

「こんな風に抱き合ってセックスしてもらったのは……初めてです…」


 泣きながら帰宅した僕に驚いたサツキさんとマリアちゃんに、何でもない、二人が家で待ってくれてるのが嬉しくて涙が出ただけと素直に白状したら、美人母娘は感動してくれたようで、メチャクチャ優しく世話を焼いてくれました。

 すると当然、男女のムードも高まり続け、自然と結ばれた僕たちでしたが、事後のピロートークでとんでもない告白をされて仰天したところです。


「えっ、じゃあ夜の生活は………その…どんな風に……?」


「私が四つん這いになって、夫が後ろからしてばかりでした…」


「バック専門ですかぁ。それはまた、妙なこだわりを持った男ですね」


「……拘りではなく、コンプレックスを持ってたんだと思います」


「というと?」


「夫は小柄なので、自分より大きな女と抱き合うのが屈辱だったんでしょうね。それに、小さなお珍宝を見られたくなかったんだと、今…分かりました……」


 腕枕されたサツキさんの顔がギンギンにそそり立つ愚息を見て赤くなる。

 実は3連発した後、途中で失神したサツキさんを回復Sで僕ごと全ステータス回復させましたが、性欲もよみがえった僕はまたムクムクと勃起した訳で。

 でも、平均以下の肉棒を見られたくなく、見栄でスキル如意棒を使いました。

 その点に関しては、僕もDV夫と変わらんなと凹んでしまいます。


「ちなみにですが……夫さんのは、どれぐらいの大きさでした?」


「……恐らく、10センチにも満たなかったと思います…」 


 よしっ、勝った!!


 でもそんなのは、虚しい勝利でしかありません。

 僕が誇るべき勝利は、隣にいる彼女の幸せそうな姿でしょう。

 守りたい、その笑顔。

 そのためには、まずちゃんと離婚を勝ち取らないと。


「あの……そのままで…辛くないですか…?」


 メチャクチャ辛いです!

 でも、もう一度ヤリ始めたら三連発するまで治まらないですからね。

 またサツキさんをアヘ顔で失神させるのは、ちょっと気が引けます。

 …………別の方法で抜いてもらいましょうか。

 という訳で、手コキで1回、パイズリで1回、フェラで1回どっぴゅんしてもらって大満足で賢者タイムに入り、もう回復Sを使わず美女の胸で安眠しました。




「昨夜はお楽しみだったわね」


 朝食の席でマリアちゃんに弄られました。

 サツキさんの部屋であれだけ大ハッスルしましたから、隣のマリアちゃんの部屋には筒抜けでしたもんね。まぁ、きっと言われると覚悟はしてましたよ。

 だから、切り返しの言葉も用意しておきました。


「うん、本当に楽しかったよ。サツキさん今夜もお願いしますね」


「えっ……はい、こちらこそ…お願いします…(ポッ)」


「フーン、まぁ仲が良くて結構だけど、隣に思春期の娘がいるんだから、卑猥な言葉を叫ぶのは慎んで欲しいわ」


「えっ……僕、なんか変なこと言ってた?」


「私の口から言わせたいのね。もぉ、本当にヘイロオ兄さんは変態なんだから」


「いや、別に、そんなつもりは……」


「ツバメ返しとひよどり越えって何?」


「ブフォッ! そ、それは……」


「あと、秘技ハーケンクロスにも説明を求めたいのだけど」


「ホントもう勘弁してつかーさい。絶対にググるのは止めてつかーさい」


「ま、今日のところはこの辺にしておいてあげる」


 ウフフフフと小悪魔のように笑うマリアちゃんは、ちょっと興奮してるみたいですね。この調子だと高校生になる頃には立派な女王様になりそうです。


「ヘイロオさん、今日の予定は?」


 小生意気な娘をメッと叱ってからサツキさんが優しく問いかけてきた。


「昨晩に説明した通り、元のアパートで偽装生活をしないといけないので、一度向こうに行って生活痕を残してから、昼前に帰ってきます」


「分かりました。お昼を用意して待ってますね」


 ニッコリと微笑むサツキさんがいつも以上に綺麗で眩しい。

 やっぱりこれって、僕の子種の魔力の影響ですよ。

 日本に居る時に作られる精子に魔力は宿らないけど、異世界帰りの魔力有り精子をこれからも注入し続けたら、サツキさんどうなるんでしょうねえ……




 朝食後にタクシーで安アパートの近くまで行き、そこから歩いて元の部屋に窓から入ると、付けっ放しの照明を消して今度は玄関から外に出る。

 昨日買ったママチャリに乗って、まずはハロワへ行きました。

 30分ぐらい仕事を探してるアピールをしてから、スーパーへ行って買物をして部屋に戻り、また音楽を鳴らします。


 11時半頃に、こっそりと窓から抜け出してタクシーを拾い、また少し遠回りしてもらってから新居の近くで降りて、そこから徒歩で帰宅しました。

 サツキさんの作ったお昼ご飯は、昨日の晩飯同様に最高でした。

 やはりこの人、自己評価が異常に低いだけで、本当は超有能なんですよ。

 もちろん、昨夜同様にべた褒めしながら完食しました。


 午後はサツキさんに車を出してもらってホームセンターへGO!

 異世界の農地でトウモロコシを作りまくるためのアイテムを仕入れます。

 前回同様、農具と肥料を買いましたが、今回は秘密兵器も購入しました。


 世界のホンダの小型耕運機です。


 諸々込みで10万円ぐらいしましたが、きっと大活躍してくれるはず。

 彼の成績次第で第二、第三の耕運機を投入する予定です。

 その他にも、いろいろ買い込んで帰ってきました。

 

 新居の車庫に行くと、通販で買ったアルミ製の大型リヤカーがドーンと鎮座していました。その荷台の上に届いてた他の商品も置いてあります。

 その中からお目当ての品を手に取り、ゴーグルを付けてテストを始めました。

 やはりこれはイケると手応えを感じ始めたところでスマホが鳴ります。


「天篠君、先方のアポが取れた。明日の午後で頼む」

「了解しました。待ち合わせは、ココでもいいですかね?」

「まぁ、大丈夫だろう。じゃあ午後一で迎えに行くから宜しくな」


 これで3人目ですか……

 奇しくもこれまで全員スポーツ選手ということになります。


 闇医者を始めようとした時は、こんな結果は想像もしてませんでしたけど、ビジネスとして割り切って考えれば最良の道へ進んでると思います。

 大金を稼ぐスポーツ選手なら高い治療費を取っても心が痛みませんし、相手も怪我さえ治ればさらに大金を稼げるのだから、超ウィンウィンですもんね。


 夕暮れ前に安アパートへ戻って、しばらく人がいるアピールをして照明を付けてから窓から抜け出した。夕食前に新居に帰り、サツキさんが腕を振るったディナーに舌鼓を打ってからまったりと夜を過ごした後、超美人婚約者とベッドに入って中出し三連発を実施しましたが、サツキさん今日は気絶しませんでした。


 今の僕の子種には魔力が無いからでしょうね。


 逆に昨日は、一発目を注入した後は大変なことになりましたから。

 初めての魔力に身体が過剰に反応して、キメセクになっちゃいましたもん。

 サツキさんがろくに憶えてないことだけが救いでした……




「あぁ、またソレか。みんなそう言うんだよね~。アハハハハ」


 翌日の午後2時、武者野選手を治療した時と同じホテルの一室で、読売タイタンズの大エース、菅原投手と対面しました。

 そこでまず驚いたのが、彼の体が予想以上に大きかったことです。

 テレビ画面で観ていた彼は、そこまで大きく見えなかったのに、生で見る彼は大きくて分厚くて迫力がありました。

 その素直な感想を伝えたら、言われ過ぎてるようで苦笑いされた次第です。


「最近の野球選手はみんな体が大きいからな。その中に混じると大きく見えないのさ。でも我々のような一般人に混じると、見ての通りの巨躯なわけだ」


 そう言う上城氏も175センチぐらいあって大きい方なんだけど、菅野投手はその彼より10センチ以上も背が高い。

 そのうえ、鍛えてるから威圧感がハンパないですよ。

 異世界でエマさんやレジーを見てなかったら逃げたくなってるところでした。


「いや~、本当に凄いですね。思わず見入ってしまってすいませんでした。さて、それでは治療させて頂きますが、まずは患部がどこか教えて下さい」


「気功師さんは、トミージョン手術って知ってる?」


「あぁ、聞いたことありますね。たしかヒジの腱を移植するんですよね。それも自分の体の別の腱を使って」


「へぇ、最近は一般の人でも知ってるんだなぁ」


「メジャーに移籍した日本人選手がトミージョンをやったことで大きな話題になっとったからな。やはりテレビの影響が大きいんだろう」


「では、患部はヒジで、腱の損傷ということでよろしいですね」


「正確には腱じゃなくて靭帯なんだけど、患部がヒジなのは間違いないよ」


「トミージョン手術をやるとな、復帰までに1年半ほどかかるんだ。3年後にFAでメジャーに移籍したい菅原投手にとっては受け入れ難いブランクになる」


「そこで僕の出番という訳ですね。僕なら1年半どころか、たった1分で完治できますから」


「あぁ、ホント武者野さんが言った通りだ。君、サラッと凄いこと言うよね」


「はい、こればっかりは事実ですから」


「うん、僕の直感も君は本物だと言ってる。じゃあ僕のヒジを頼めるかな?」


「お任せを。服は着たままでいいのでヒジをこちらに突き出して下さい」


 テーブルセットの向かいに座る菅原投手が右肘をゆっくりと前に出す。

 僕はそっと右手を添えてから「ミドルヒール」と呟く。

 強くて温かい光がヒジを優しく包んでいった。

 

 ん、んんん………光が細く伸びて肩の方へ向かってますね。


 そう思ったのも束の間、ヒジを覆っていた光は鮮やかに霧散した。

 この感じなら完治したはずです。右肘は。

 ただ、ちょっと心配ですね……


「あの、もしかして、右肩にも故障を抱えてませんか?」


「あぁ、さすがだね! 君なら分かるかもって思ってたよ」


「何だとっ、じゃあ本当に右肩も怪我してたのか……!?」


「黙っていてすいません上城さん、まだ誰にも知られたくなったんですよ」


「いや、それは構わんが……肩の治療までは契約に含まれとらんぞ」


「武者野さんから聞いてましたから、お金は余分に用意してありますよ」


 タイタンズのエースは、足元のレザーバッグをテーブルに置いてファスナーを開き、中から札束を取り出して並べ始めました。


「おい、菅原君、三千万あるじゃないかっ。まさか君も……!」


「はい、実は肘と肩の他に腰もちょっとヤバイんですよ」


 この後は、武者野選手の時と同じ流れでした。

 渋々OKを出した僕は、あと二つ治療を行い、菅原投手と上城さんに一つ貸しということになったのです。

 体から嘘のように痛みが消えた菅原投手は、晴れ晴れとした顔でお礼を言ってから上城さんと病院に向かいました。

 検査を受けて本当に完治したか確認するためですね。用意の良いことです。


 ひとり残された僕は、三千万が入ったバッグをドキドキしながら持ってホテルを出て、タクシーに乗り新居まで帰りました。

 ひったくりが怖かったので、カムフラージュなどできず、新居の目の前までタクシーを使ったのは、我ながらチキンだなと反省してますよ。




「また無理やり積み込んだものね。大丈夫なのヘイロオ兄さん?」


 読売タイタンズのエース菅原投手の怪我を三つも治療した翌日。

 今日は異世界に出張する日なので、朝からバタバタと準備に追われました。

 とはいえ、その合間にサツキさんとイチャコラしてましたし、ほんの30分前には三連発して僕の爪痕をたっぷりと残しておきました。


 そして、またしばらくお別れの時がやってきます。

 新調したアルミ製の大型リヤカーには、荷台に入りきらないほど荷物が積み上げられ、落ちないようにシートを被せて紐で結んであります。

 呆れてツッコミたくなるマリアちゃんを責められない不格好さでした。


「召喚そのものには問題無いよ。向こうに行ってからは分からないけどね」


 大工のクルトに召喚の空き家の扉を拡張してくれるように依頼してある。

 仕事の早いあの人なら既に工事は終わってるはず。頼みますよー。


「無茶だけはしないで…必ず帰ってきてね……」


 サツキさんが泣きそうな笑顔で僕を見つめています。

 言葉では茶化していたマリアちゃんも寂しそうな顔をしています。


 気付いたら僕は、両腕で二人を一緒に抱き締めていました。

 触れ合った部分から二人の感情が流れ込んでくる。

 きっと僕の想いも二人に伝わったはずです。


 言葉も無しに気持ちが通じ合った僕たちに、見えない絆が生まれました。

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