第68.5話

「これで全部だな?」

「ええ、ありがとうございます! ミトカさん達『深紅の連団』のおかげで、すっかりこの辺の魔獣はいなくなりましたよ!」

「街道沿いで出なくなっただけだろうから、これからも注意してくれよ」

「はい! あ、こちらが今回の報酬です。それと、連団の皆さん一段位ずつ上がっていますから」


「おおーっ、やったぁ! ミトカ、おまえ金段一位になったんじゃねぇか?」

「ああ、そうみたいだ」

「くぅ! 流石だぜ! 俺も金段になったし、おまえのおかげだぜ、ミトカ!」

「おまえ等も全員上がってんだから、みんなの功績だよ」


「え、それは……はい、でも……」

「……? なんかあったのか?」

「どうもテルムント港で、問題がおこってるみたいで……」

「ここから直ぐだな。よければ様子見に行こうか?」

「お願いできますか? すみません……金段の方々にこんな事……」


「いいって、いいって。俺達今日は機嫌いいからさ」

「そうそう、あ、でもちょっとは報酬欲しいかも」

「何、言ってんだよ、様子見に報酬なんか出るかよ」

「言ってみただけー」




「冒険者組合で聞いたんだが、面倒事か?」

「あ、み、ミトカさんっ! 実は……この前、船で届いた積み荷から……とんでもねぇもんが見つかっちまって……」

「なんだぁ? お宝でも?」

「だったら困っちゃいねぇだろ。害獣とか害虫か?」


「うっ……これ……人、か?」

「はい、あの木箱を開けたら、出て来たんですが……」

「オルツから積んだ荷物みたいだな」


「こいつ、密航者だな。多分、ガウリエスタ辺りから乗ってきて、オルツでこの荷物の箱にでも隠れたんじゃねぇか?」

「もしかして『虫殺し』する前に? うわー、馬鹿な奴ぅ」

「食料品じゃなかったんで、すぐに開けなかったんですよ。オルツで『蒸気殺虫・浄化済』って証書があったもんで」


「こいつの身分証、なかったか?」

「あ、これです」

「………! リーチェス……」

「知り合いか、ミトカ?」

「……仇だ。俺の親友を……殺した奴だ」

「あ、前に話してた幼なじみか。なんだ、死んで当然の奴が死んだだけか」


「俺の手で殺してやりたかった……!」

「ミトカ、おまえは冒険者で、復讐者じゃねぇ。こんな奴のために手を汚す事なんかねぇよ」

「そーそー、俺達の連団長に殺される資格、こんな奴にはねぇよ!」


***


「アステル小隊長、あの三人の元仲閒と思われる男が、テルムント港で遺体で発見されました」

「あらら、あの三人には朗報ね。あ、あいつ等に言っちゃダメよ」

「はい」

「でも、よかったわ。変な所で死んでなくて。遺体って今はどこへ?」

「なんでも、我が国の冒険者にとっての仇だったようで、テルムント冒険者組合の組合長が、その冒険者に焼却を許可したみたいです」

「そう……いい判断ね。その冒険者の人も、気持ちに区切りがつけたでしょう……」


「……只今……戻りました……」

「もしかして、まーた撒かれちゃったの?ディルク」

「だって、あいつ、すっげ速くて……」

「そうね。確かに凄い速度で移動できるみたい。きっと『俊敏』の魔法よ。流石よねー! あの炎熱魔法も凄かったわ!」

「見たのか?」

「ええ! 溢れた魔虫の群れをほぼ一撃よ。あれなら、迷宮に潜っても平気ね」


「……冒険者組合で聞いたら、あいつ『デルムト五番』に入ったらしくてさ。まぁ、無事に出て来たんでいいんだけど」

「え? 五番……って、中級じゃない! なんでいきなりそんな所……」

「その上カースでも……」

「まさか、中級に? あいつ、単独って言ってたわよね?」

「うん、単独で中級と……」


ばんっ!


「すぐに行くわよ! ちょっと強いからって、いきなり中級なんて無謀すぎ! イスグロリエストの魔法師になんかあったら、こっちが咎められるわ!」

「あ、いや、でも、なんかもう、カースに居ないみたいで……」


「はぁっ? 何処に行ったのよ! あたしが『行く』って言ったのに!」

「地図を買ったのは……ダフトの迷宮だって言ってた」

「行くわよ! ダフト! とっつかまえてやらなくちゃ! なんて身勝手なの! これだから魔法師って!」



(あ……えーと……どうしよう、ものすっごく……言いづらい感じになっちまった……)

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