第20.5話
「どうしてよ……どうして、門前町にすら入れてもらえないのよ!」
「あなた方が『銀段三位』だからですよ。この国では弱い冒険者じゃ、すぐに死んじゃいますからね。そういう危険を冒して欲しくないので、一定以上の実力がないと、冒険者は入国できない決まりなんです」
「実力を示すには、どうしたらいいんだ?」
「剣や弓なら、あちらへ。魔法は右手の方で『試験』がありますから」
「……別々ね」
「仕方ないね。じゃあ、ナスティ、またあとで」
「ああ、頑張れよ」
「あなた達も」
「最近、銀段三位程度でここに来る人なんていなかったのに」
「女衛兵か」
「そうよ、あたしにすら負けるようじゃ、この国じゃ無理だから。あ、二対一でいいわよ。面倒だから一緒にかかってきて」
「舐めやがって……!」
「はいはい、あー、銀段三位……なんだよ、魔法師じゃないじゃないか」
「魔法は使えるんだから、関係ないでしょう?」
「そうだね。じゃ、魔法使って」
「え?」
「ほら、早く!」
「……馬鹿にしてっ!」
「んー……あなた達、弱過ぎだわ。今日は不合格ね。また、明日」
「待てっ、二刀流など、卑怯ではないかっ!」
「はぁ? あんた、魔獣相手に騎士道とか求めちゃう間抜けなの? そうだとしたら、即刻強制退去、入国拒否確定よ」
「……うっ……そ、そう言うつもりでは……」
「力もない、技術もない、その上礼儀もないし常識もない……と。冒険者が誰でもなれるっていう制度、絶対に止めた方がいいわよね」
(何故だ? こんな女の剣など、俺の力ではじき飛ばせるはずなのに! どうして、こんなにも力が出ないのだ?)
「そっちで転がってる弓の人も連れてってね。じゃ、一応、また明日……ね?」
「なぁ……それ、遊んでるのか? こんな弱くて、遅くて、温度まで低いモノを『炎』だなんて、よく恥ずかしくないね? 【火炎魔法】じゃなくて【灯火魔法】なんじゃないの?」
「こ、こんなはずじゃないのよ……だって、ガウリエスタにいた時はちゃんと、ちゃんと……!」
「とにかく、今日はもう止め。じゃ、お帰りはあっちね」
「いいじゃない! 国境門は越えているんだから、町に入るくらい……!」
「要らないんだよね『弱くて使えない冒険者』なんて」
「あ……あたしが『弱い』……ですって? 使えないって、どういうことよっ!」
「言葉そのままの意味だよ。本当にここまで弱い奴、初めてだ」
「そっちも終わったの? ディルク」
「ああ、駄目過ぎて話にならなかった」
「たまには『入国試験』も面白いかと思ったけど、やっぱり全然弱過ぎる奴ばっかりね」
「ガウリエスタの奴等じゃ、こんなものだろ」
「アステル小隊長! 先程の三人について、このようなものが……」
「あら? 皇国の触書? ……やだ、あいつ等同行してきた仲間を刺して、逃亡中みたいじゃない」
「追い出すか?」
「ん……いえ、無理だわ。これによると皇国ではあいつ等の入国拒否をするだけで、捕縛も投獄もしないみたい」
「被害者も加害者も、他国の奴か。そりゃ、態々捕まえる意味はないよな、皇国側には」
「そうなると……もし入国させなかったら、国境門の近くでのたれ死ぬ訳よね? あいつ等の死体に、魔虫や魔獣が群がるってことよ」
「それゃ、ご遠慮したいな」
「しょうがないなぁ。明日、入れるわよ」
「宜しいのですか?」
「国境門付近で、魔虫の危険が増えるよりましよ。必ず三日に一度は『雑用依頼』を受けさせて。その内迷宮内で死んでくれれば、こっちとしても都合がいいじゃない」
「迷宮で魔獣達に餌を供給できる……と」
「あいつ等の入場許可は、育成中の迷宮だけに限定ね。あ、でもまだ入れる段位じゃないわね。じゃあ、依頼の達成率が悪かったら、強制的に迷宮での荷物運び、やらせて」
「うわ、かわいそー」
「仕方ないわ。『弱いのが悪い』のよ」
「冒険者的理由だね」
「あら、この国の本物の冒険者達と一緒にしないで! 『ガウリエスタ的』よ」
「はははっ、確かに」
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