第11話 邪神戦闘Ⅲ

「魔王様ッ!?」

 

 空から地面へと降りてきた魔王のことを視界に入れたマキナが大きな声で叫ぶ。


「……な、何……それ」

 

 満身創痍状態のマキナ。

 その姿を、恐らくマキナが邪神に向かって使用している雷を見て魔王は内心絶句する。

 

 あり得ない。

 

 それがマキナを見た魔王の感想であった。

 マキナが邪神に向かって使っていると思われる雷。

 それは神器で間違いないだろう。長き時を生きる魔王はこの世界由来の神器をその眼に映したこともある。

 

 神器。

 それは秘術によって人々の信仰の心を……長い時を持った思いの強さを一つに集め、作り出す叡智の結晶。それが神器であり、決して人間風情が扱える代物でもない。

 というか、そもそも神器は簡単に作れるような代物でも無く、現状。この世界に神器を生み出せるほどの信仰心はない。

 別の世界から一切使われずに貯め続けられている信仰心を持ってくるでもしない限り不可能だろう。

 

 だが、現にマキナは神器を使用し、その体をこれ以上無いまでに酷使していた。

 その体には想像し難い激痛が走っていることだろう。


「ひっ……」

 

 魔王の口からか細い声が漏れ出す。

 雷の中。

 ゆっくりと邪神がボロボロになっている体を浮かせ、這い上がってきているのだ。


「……ッ」

 

「じゃ、邪神様……」

 

 魔王の体が震える。

 かつて生まれ故郷が蹂躙された記憶が、邪神へと反逆し、無惨にも敗北した記憶が蘇る。


「大丈夫。しっかりと魔王様のことは守るから」


 邪神の体を押さえつけていた雷が消滅する。


「はぁ……はぁ……はぁ……本当に想像以上だぞ。人間。まさかここまでやるとは思っていなかったぞ」

 

 体に多くの傷を作って血を流し、魔力を失った邪神が口を開く。


「……ぶち殺す」

 

 邪神が棒立ちしているマキナの方へと地面を駆け抜ける。

 

「マキナッ!!!」

 

 魔王が大地を蹴る。

 邪神と同じようにマキナの方へとその足を向ける。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る