第25話

「ラーニャァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 何も出来ずにただただ呆然と見ていた僕の目の前で引き起こされた惨劇。

 ようやく硬直から抜け出した僕はレミアにも負けない絶叫を上げた。この惨劇を引き起こした首謀者は間違いなくラーニャであろう


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!!!」


 レミアの絶叫もまた響き渡り続ける。レミアの体は光に貫かれた震え、魔力を強引に引き抜かれていた。

 いや、今はラーニャのことなんて考えている暇はない。


「……ッ」

 

 僕は大地を蹴る。

 己の体に刻み込まれた幾つもの刻印が光り、莫大な力を流し込んでくれる。


「ナニッ!?」


「消えろッ!!!」

 

 力任せの一撃。

 ただただ己の拳に魔力を纏わせて殴りつけただけの一撃。

 

「フグッ!?」

 

 別になんてこともない一撃だが、僕という絶対の存在によって振るわれたその拳は一つの圧倒的な暴力であった。

 

 何も許さず、何も抵抗させず、怪物を消し飛ばす。


「うぐっ!?」

 

 本来僕という非才な、凡人でしかない僕の体では耐えきることの出来ないまでの膨大な魔力を運用した僕の体に激痛が走り、己の表情を歪ませる。


「……痛い……が、動ける」

 

 僕は口を開いてから、レミアとアレナの方へと視線を向ける。


「……これは」

 

 レミア。

 謎の光に体を貫かれ……何か繭のようなものに包まれていくレミアの姿を見て僕は何もしない。


「駄目だ。……アレナは……」

 

 僕は頭を潰され、その生命を終わらせていたアレナへと。


「まだ行ける……」

 

 僕はしゃがみ込み、ただの肉の残骸と成り果てたアレナの頭部へと両手を向ける。


「ふー」

 

 深く、深く息を吐き、アレナの体へと膨大な魔力を流し込み、己の生命力までもアレナの体へと流し込んでやる。


「……」

 

 アレナの後頭部が光に包まれていく。


「邪法……災禍再命」

 

 奇跡はなる。

 終わり、尽きていた人間をもとに戻すという最もあり得ない奇跡を引き起こして見せた。


「……ん、あ?」

 

 確実に尽きたアレナの生命。

 僕が発動させた、かつてこの世の生態系のバランスを崩すとして邪法認定を受けた邪法によって完全に戻ったのだった。

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