第14話

 僕は息を潜めていた状態のまま騎士たちについていく。


「居たぞッ!!!」

 

 そんな中、とうとう騎士の一人が魔族の姿を発見する。

 ……見つけるの遅いなぁ。


「攻撃用意ッ!」

 

 それに反応して他の騎士も動き始める。

 その動きは騎士にしては十分早く……練度も十分。

 しかし、相手は騎士ではなく。人でなく。

 単体性能に優れている魔族なのだ。


「『───────』」 


「『───────』」 


「『───────』」 


 次々と姿を現す魔族たちが人間には聞き取れない声をその口から発し、魔法を発動させていく。

 

「ぁぁぁぁああああああああ!?」


「いった!?」


「敵襲ッ!敵襲ッ!」


「反撃用意ッ!反撃用意ッ!」

 

 魔族の放つ強力な魔法の数々はいとも容易く騎士たちの守りを突き破り、その生命を奪っていった。 


 大きな一つの集団として動こうとする人間たちの行動はあまりにも遅すぎた。

 魔族たちの猛攻を前に騎士たちは何もできずに倒されていく。


「このッ!!!」

 

「死ねぇッ!」

 

 そして、そんな状況に嫌気が差した騎士たちが単独行動を開始し、個々人が魔族と向かい合い始める。

 人類の最大の強みである数と連携を放棄しだす。


「馬鹿ッ!単独行動はッ!?!?」

 

 それが最も愚かな行為であると理解している騎士たいを束ねる男は叫び続ける。

 しかし、その男は今、この場で最もすべき行いを……誰でも少し考えればわかるようなことを命じることができなかった。

 既にパニック状態になっているのが見て取れた。


「愚か者ッ!個人で戦わない!今すぐに周りの数人と小隊を組み、その小隊と共に魔族一人とぶつかりあいなさい!決して、一人では戦わないようにッ!」


 そんな中、冷静さを保ち、今すべき簡単な命令を下したのは本来ここにいてはいけないラーニャだった。

 有無を言わせないラーニャの言葉を前に騎士たちは素直に頷き、最善の行動を取り始める。

 優れた連携で小隊を作り、これまた優れた連携でもった一人の魔族と戦い始める。

 その姿はまともに戦えているように見えた。


「第二王女殿下ッ!?」 


 絶対的なまでの魔力を漲らせるラーニャがその姿を現す。

 その闘志は今すぐにでも魔物を殲滅せんばかりであった。


「強者は全て私が相手するからあなた達は気にしなくて良いわ。私が倒すから」

 

 多くの魔族を前に、ラーニャは不遜な笑みを浮かべた。

 今のラーニャはこれ以上無いまでにはりきっているように見えた。見ているこっちがびっくりするくらい張り切っているように見えた。


「ふわぁ」

 

 僕は完全に観戦者の気分が出来上がっていた。

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