第30話
僕を襲う浮遊感。
既に僕を濡らす水の感覚はない。
「……いった」
そして、僕は大地へとその体を落とした。
「「マキナッ!?」」
巨大な子羊が消滅し、この辺り一帯を覆っていた結界が崩れ去っていく中。
地面へとその体を倒した僕のもとにレミアとアレナが近寄ってくる。
「大丈夫!?」
「怪我はあらへんッ!?」
「うん。ないよ。だから、安心していいよ。心配掛けてごめんね。ふたりとも」
僕は立ち上がり、思いっきり自分の体を伸ばす。
「ふー」
既に自分の体をこれ以上ないまでに濡らしていた血と水はきれいに無くなっている。
「それなら良かった……」
「ほんまに心配したんやさかいね!?いきなりあんな怪物に戦いを挑んだか思たら、なんかわしごと燃やしだして、おらへんくなってまうやさかい!?し、死んだ思たんやさかい……」
「ははは、本当に心配かけてごめんね。でも言ったでしょ?僕は凄いって。あれくらいの存在であれば簡単に殺すことができるんだから。あまり僕を舐めないでよね?僕が死ぬとかあり得ないね!」
「す、すごい……ッ!」
「君と関わったら関わるほど、平民とは?ってこと疑問に思わされんねや。……ほんまにどういうことなん?ただの一平民が持てる実力ちゃう思うねんけど」
「まぁ、そこは僕だから」
「なんやその言葉。無敵すぎるやろ」
「うん。僕だからね。うん」
「……むちゃくちゃや」
「そ、それで……」
レミアが僕の服の袖を引っ張り、とある一つの方向を指差す。
「あ、あれは……何?」
レミアが指差したもの。
それは不気味に佇む一つの謎の球体だった。
繭のような、黒い球体が地面に転がっていた。
「さぁ……?」
僕は首を傾げながらそれへと近づいてく。
「ちょいちょいッ!?何をしようとしているの!?」
「命が惜しくあらへんのか!?」
「いやぁー。別にこれくらい平気だって。それに……これがなにかもわからないまま野ざらしというわけにも行かないし、多くの民衆が過ごしている町中に持っていくわけにもいかないだろう?」
「そ、そうだけど……」
「じゃあそういうことだから」
僕は一切の躊躇なくそ繭を刀で斬り裂いた。
斬り裂かれた繭からは水がこぼれ落ち、繭はその姿を溶かした。
「……んっ」
そして、その場に残ったのは一人の小さな少女。
繭がなくなったその場所には小さな羊の角を生やした可愛い少女が横たわって存在していた。
「「え?」」
レミアとアレナの驚愕の声がピタリと合わさり、その体の動きを止めさせた。
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