第7話

 苦しみ、悲痛な叫び声をあげている男の方に近づこうとしていたレミアとテレシアを止めた僕。


「え?なんで止めるの?」


「あの人をあのままになんてしておけないよ!」

 

 そんな僕に対してレミアとテレシアが非難するような視線を向けてくる。


「お前らは人を疑うということを知らないのか……」

 

 そんな二人に対して僕は深々とため息をついた。


「彼が被害者に見えているのかよ。良い?魔族はとっくの昔に滅んでいるんだよ」

 

 かつて、人類を絶望の底へと叩き込んだ魔王が率いていた魔族と呼ばれる個々人が強力な力を保有していた種族。

 そんな魔族は当時の勇者たち一行によって滅ぼされたと言われている。

 

 だから、魔族たちが魔王を復活させるために自分の村を襲い、壊滅させたなんて言う話を誰も信じず、道行く通行人から無視されているのだ。


「で、でもあの人は……!」


「嘘に決まっているだろ。……レミアはともかくテレシアはもうちょい世間のことに敏感になろうよ。昔、人々に助けを求めて人を集め、集めた人を襲って金品を奪ったり金銭を要求して持ち逃げしたり。そんな犯罪が流行ったんだよ。そして、今もその犯罪は件数が減ったとはいえちゃんと残っている。どうせ、あの人もそれと同じタイプの人間だよ。それに今、この場にいるのは第二王女殿下と公爵令嬢なんだよ。目に見えている地雷を踏ませるわけないでしょ?……特にテレシアとか以前に襲われたばっかじゃんか」


「そうですよ。結構貴族たちの間でも話題になったと思ったんですが……なんでテレシアは知らないんでしょうか?」


「うん。せや。あいつらは……絶対に許したらあかん存在なんやねん!あいつらのせいでうちらの商会は損こいたんやさかい!」

 

 悲痛な叫びをあげている男を助けるべきでないと言葉を話す僕と第二王女殿下にアレナも追従する。

 アレナの商会もこの詐欺に、僕が主導で行っていた詐欺にかかったのか、怒りに満ちた声をあげていた。

 ……ごめんね?


「そ、そうか……じゃあ、見捨てる、と」


「捨てるんじゃないよ……元々あの人は苦しんでなんか居ないんだから。犯罪を取り締まるのは衛兵の仕事。僕らが彼らの仕事を奪うわけには行かないよ」


「そうだね」


「……じゃあ、先に行こう、か」


「うん」

 

 僕たちは悲痛な叫び声をあげている男を置いてその場を離れた。

 イベントを起こさせてたまるかよ。

 魔王を復活させようと暗躍する魔族たちと勇者であるレミアを接触させてたまるか。

 全てのイベントを踏み倒していくんだよ。

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