プロローグ

 彼女は天才だった。

 並び立つ者はなく、己を利用しようとしてきた薄汚いゴミ共も全て逆に利用し、二度と己に逆らえぬようにした。

 

 全ての男は己に愛性の視線を向ける。

 全ての女は己に憎嫉の視線を向ける。

 

 つまらない世界。たった一人の世界。


 そんな世界を生きる彼女は出会った。

 己に並び立つ……いや、超えるかも知れない存在に。


「素晴らしい出来だよ。じゃあ、死んで」

 

 その存在は己と同じ年齢だった。

 その存在は己に興味を示さなかった。

 その存在の瞳は才気と狂気に染まっていた。

 

 彼女はただただ呆然と仮面の内側より光る仄暗い瞳を眺める。


「んー。流石に王女を殺すのは不味いよなぁ……放置で良いや。もう巻き込まれないようにね。お馬鹿さん」

 

 その存在は、少年は、マキナは。

 結局最後の最後まで己に興味を示さなかった。

 

「ははははははははははは」


 嗤う彼女は誓う。

 必ずあの存在に己という存在を叩き込んで見せる、と。


「ははははははははははは」

  

 この世界にもう一つの狂気が誕生した。

 才気に溢れる最厄の狂気が。

 

 願わくば己の手の中で彼が倒れることを。

 願わくば己が─────────────────。

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