第32話

 国立カルド学園の入学式。

 それは実に大きな出来事である。

 

 普通のときであっても大きな出来事であるそれ……しかし、今年は更に重要度が跳ね上がっていた。

 噂の絶えない第二王女を始め、多くの有力貴族の息子、娘。天才と呼ばれる存在が入学している。

 貴族たちの間では奇跡の世代。

 そう呼ばれるまでに優秀な世代であるのだ。

 

 国立カルド学園に大きな光が差し込んできたのだ。

 そして……またもう一つも。 


 光あるところに影あり。

 

 光があれば必ず影はある。

 

 絶対的な権力は絶対的に腐敗する。

 

 大きな光と呼応するように……また、影も深く大きくなっていた。


「グルル……」

 

 狂気の嗤う夜。

 その下で着実に悪意も育っていた。

 

 膨れ上がった悪意は……狂気とぶつかり呑まれるのか、呑み込むのか。

 それは天の月のみぞ知る話であった。

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