【22】お仕事ご苦労様ですⅡ
釈放されました。お騒がせしました。
気を取り直し、街の目抜き通りを歩く。
巡礼者がめっきり減った、と衛兵さんたちは言っていたけど、街を歩く人の数はそこそこ多い。
まるでテレビで見る中東とかの特集みたいだ。ちょっと――いやすごくワクワクする。
露店もたくさんある。
食料品、装飾品、武器、旅の道具類。眺めているだけで一日潰せそうだ。
ただ――。
「ディル君。10クルスって、どのくらいの価値?」
「さあ」
ニコニコしながら言われた。あ、これ散歩が楽しくて他がどうでもよくなっている顔だ。
うーん……やっぱりこの世界独自の通貨単位なんだね。当たり前だけど、まいったな。
並んでる品物からして、1クルス=10円くらい? いやもうちょっと?
「主様。俺たち金なんか必要ないので、気にしても仕方ないのでは?」
「冷静で身も蓋もない指摘ありがとうディル君」
とりあえず。
田んぼに侵入したイノシシから採れた素材――キラキラ光る宝石みたいなもの――が換金できないか試してみよう。
旅の道具らしきものを売っているお店に行く。ここなら大丈夫かな。
「すみません。ここって買い取りやってますか?」
「ええ、大丈夫ですよ。どのような品でしょう」
店員さんの返事にホッとしながら、素材を見せる。
「これなんですが」
「どれどれ」
――十数分後。
私たちは再び衛兵さんのお世話になっていた。
「まさか君たちがこんな危険物を持っていたとは……」
「ご、ごめんなさい……」
ほんとにお仕事ご苦労様です……。
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