【 オレンジ色 】

 もう一度、彼に会いたい……。



 ――その時、カフェの入り口の方から音がして、おもむろにその扉が開いた――。


 私はハッとして、そちらの方を見る。

 もしかしたら、彼?


 私の心臓が一瞬、時と共に止まってしまったように思えたが、すぐにそれは動き出した。

 彼じゃない。知らない人だ……。


 ふぅ~と大きく一つため息をつくと、左手から思わず目を細めてしまうような眩しさを感じる。その大きな窓の方を見ると、いつの間にか雨は止み、オレンジ色の夕日が顔を出していた。

 西欧独特の白い壁と、この夕日と同じオレンジ色の屋根が、すごく素敵に見える。

 いつも見る景色なのに、不思議と今日は、やけに美しく感じた。


 それともう一つ、綺麗な色がこの窓から見える。


 このカフェの横にあるピンク色の花を咲かせた木。


 小さい頃から毎年見ていたその懐かしく思える木の枝から、ヒラヒラと花びらが散って見えた。


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