第三十一話 異界の知識②
属性という言葉は、ゲームにせよ何にせよ、誰しも一度は聞いたことがあるはずだ。勿論俺も何度も聞いている。
日本にいた頃はゲームとかで気にする言葉だった。
意味は?と聞かれると、火とか水とか地面とか、英語ではタイプと呼ばれるものとしか言えない。
だが詳しく考えてみると、もう少し深く説明することができる。
ゲームの中であれば、その物、武器、魔法、キャラが持つ能力、その共通な性質の総称である。火属性水属性というのは、その種類を自分たちが理解しやすいように、自分達が知る現象に近い名前で例えた物だと言える。
俺はそれを今から習うところなのだ。
表情は先ほどと一切変わらず無表情、だが心の中ではとてつもなく舞い上がっていた。中学二年生病略して厨二病(違います。)の後遺症なのかは分からないが、やはり男というものは、魔法やら属性やらのロマンを追い求めてしまう。
属性.........三竦みとかあるのかな?光と闇は互いにダメージが高くてってやつ!めっちゃ気になる!てか早く教えてほしい!
「では、属性について教えてもらおうか。結城、いけるか?」
「はい。」
そう言って、ユウキと呼ばれた狼が立ち上がった。当てられたら立つって決まり、つくづく学校に似てるな。てか唐突に指名してくるの怖くね?
「属性とは、基本的には火、水、風、地、雷、光、闇、無の八種類とされている、魔術、魔法が共通として持つ性質のことで、互いに得意、不得意とする属性を持ちます。また、階級が上がったり、高度な術式になると、火が炎に、水が氷に派生したりと、様々な属性が現れます。」
「私の説明する内容をすべて言われてしまったな。素晴らしい。」
はぇー。すげぇな。俺今からあれを覚えろって言われてもできる気がしない。相当努力したんだろうな.......ん?何で誉められているのに暗い顔をするんだ?
「では、次にそれぞれの得意、不得意属性を言ってもらおうか。これも魔法において重要視される基本知識だからな。桜花、言ってみてほしい。」
「分かりました。」
オウカという狼が立ち上がる。
「すべて言えばいいんですか?」
「いや、私が属性を言っていくので、その属性の得意、不得意属性を順に言っていってほしい。」
「分かりました。」
この狼、他よりもきっちりしてる。この世界にそんな役割があるか知らないけど、生徒会とかしてそうだな。
「火属性。」
「得意属性は風、不得意属性は水。」
「地属性。」
「得意属性は雷ら不得意属性は風。」
「無属性。」
「得意属性は無し、不得意属性もありません。」
「光属性。」
「得意属性は闇を除くほぼ全て、不得意属性は闇。」
「では最後に闇。」
「............ すみません。忘れてしまいました。」
「他に闇の得意、不得意属性を知っている者は..........いないようだな。まぁ、今回は質問が悪かったな。闇に得意、不得意属性があるかは現在も分かってはいない。どの属性にも対応すると言われているが、それが事実なのかも分からない。今回は分からないが正解だ。桜花、大丈夫だぞ。」
「.........良かったです。」
...........引っ掛かる言い方するなぁ。知らないと言うには詰まりすぎだし、躊躇いは隠せてないし、何かあるな。ま、下手に首を突っ込んだら面倒ごとに巻き込まれそうだし深く考えることはないだろ。
「今回は飛ばしたが、次の講習では他の属性の得意、不得意属性を言ってもらうつもりだ。ちゃんと予習してくるように。」
「せんせー。」
「なんだ?」
「こんなん誰でも知ってると思うんで、早く実技に移ってほしいんですけど........あぁ、講習に始めて来る奴がいたからか。フッ、何でもないです。」
「クスクス。」
「おい、言ってやんなよ。」
こっち見てるしクスクス笑ってる。そもそも笑う要素あったか?先程の明らかにいじめることに慣れてそうな集団に目をつけられていた。だるっ。てか幼稚だなぁ。こんなことしても、多分....
「おイ、テメェらいい加減にしロ!」
ほら、藍華さんが反応した。俺でも分かるぐらい嫌悪感出してたんだ。そういうのに敏感そうな藍華さんが分からないわけないと分かるだろうに。
「ふむ、では豪災。お前は全てを分かっているのだな?」
「.........まぁ、そうですね。」
おっと、ここで鎌風さんの助太刀が。顔は無表情に近いが口調と雰囲気的に少し怒ってる?
「では答えてもらおうか。火属性と風属性を混合し発動した第三階級の魔法に対し、水属性のマンティコアの素材を使った術式を使った魔術を放つ。すると、どのような反応が起こる?」
「............」
え、な、何?火属性と風属性をこんごう?水属性のまんてぃこあ?知らん単語多すぎるんですけど。
「なんだ、答えれないのか?」
「............ 」
スミマセン鎌風さん。多分ここにいる生徒全員答えられないと思います。隣見てみたらどっか宇宙を眺めてそうな猫の顔した藍華さんがいるし、他の奴も唸ってるし。俺は論外だし。
答えられずにいたゴウサイであろう狼はゆっくりと座った。真っ白な毛の下からちらっと見える地肌が赤いことから羞恥の感情が伺える。あ、こっち見んな。君が原因自分で作ったのに八つ当たりされても困る。
「答えられないということでいいな?.... 実技は確かに大切だ。狩りに参加したいとはやる気持ちも分かる。だが、基礎がしっかりしていなければ魔法も、魔術も上手く扱うことができない。この講習はそれが出来るようにするためのものだ。意味がないものなんてない。皆もそうだが、講習だからと言って聞き流していては意味がない。しっかりと、講習は受けるように。」
ま、俗に言うザマァってヤツかな。取り巻きの奴らも反省しとくことだな。
「........では次に魔法の階級についてだ。」
おぉ、また
「簡単に言えば魔法の強さだ。階級が上がるにつれ威力や性能が増す。勿論難度も必要とする魔素量もだ.......そうだな、伊綱、各階級とそれらの特徴を言ってみろ。」
「分かりましたぁ」
ゆったりとした口調の狼が立ち上がる。あの、見た目の差が無さ過ぎて見分けられないんですけど。
「一般的に教えられているものでしたらぁ、階級はぁ下階級と呼ばれる1∼5階級とぉ、上階級の6∼10階級にぃ、
「ふむ...............大方合っているが、魔素量に対する認識があやふや、と言うより抽象的だな。だがその感覚で間違ってはいない。いいぞ。」
確かに言ってた事はとても分かりやすいんだが、具体例が出てるのにふわっとしたイメージしか湧かないというか、表現しづらいが確かにあやふやだ。一周まわって抽象的と捉えられるな。
「戦闘に重きを置く者は伊綱の様な認識で構わないが、もしこの中に治癒の面に重きを置く者がいるならば先程の認識でいてはならない。個々で差があるとは言えある程度は同じだ。次回の試験の範囲にも含まれるので書いておくように。」
そう言うと、鎌風さんの体毛が若干ゆらゆらし始めた。きっと魔法だ。うわ、使ってるとああいう風に見えるのか。なんとなーく、ぼんやりと身体の周りが光っている。壁が白いのもあってちょっと緑色なのが分かる。
「おい、迅」
「ん?どうした?」
「...........いや、なんでもねぇヨ。」
藍華さん、どうしたんだろ?声に反応して首を回したらバッチリと目が合ったんだけど。
「旋風よ、吹き荒れろ、
室内に穏やかなな風が吹いた。しかし、打って変わって前方の壁にはスパスパという擬音が鳴りそうなほど高速で何かが描き刻まれていく。先程とは違い鎌風さんの体毛も激しく揺れている。発動者付近とそれ以外とで風量が違う。
ふぉぉぁぁ!スゲェ!本物の魔法だ。回復魔法とは違い派手だし、ちゃんと詠唱してる!...........けど、もしかして俺これからああ言う厨二ワードを唱え続けるのか?うわぁ、恥っず。
風は今だに吹き続けている。時間が経つに連れどんどん描いているものが完成していく。
「............ふぅ。では、階級毎の消費する体内魔素量を詳しく説明しよう。」
そして、完成したであろう絵と文章に目を向けさせるため鎌風さんは手を伸ばし指そうとする.........指そうとするのだが、
プルプル
届かない。こぉれはひどぉい。いや、四足歩行の生物だから仕方ないけどちょっと無理があるよ。
「...........ぐっ」
いや堪えられないよこれ。
端から見りゃ滑稽以外の何ものでもなく、この教室内が若干ザワザワし始めた。ガヤガヤと言う程のうるささではなくクスクスと言った途切れ途切れのうるささだ。
それでも大笑いにならないのは鎌風さんが真剣に講習を行ったているのを理解しているからだ。
でもね、鎌風さん。こう考えずにはいられないんですよ。なぜ黒板システムを設けたんですか?と。
「........やはり手で示すのは難しいようだ。ん”ん”っ、下階級の魔法は向き不向き関係なく使える。1級の場合、消費魔素量は15デリアであり、階級が上がるごとに更に20デリアずつ増えていく。下階級のみ使用した場合は減りが分かりやすいだろうが、ここからが問題だ。」
あぁ、計算力が問われ始めてる。隣の藍華さんから煙が出ちゃってるよ。
「上階級からは、下階級第5階級における消費量を基準に5倍される。ただし、第10階級のみ10倍だ。」
おー、ここから規則性がなくなっていくのか。
因みに隣の方は既に真っ白の灰になっていらっしゃった。まだまだ続きそうですけど本当に大丈夫そうですか?
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