第二十六話 酒を飲んでも呑まれるな

「う、うぅん?」


うっ、背中がゴツゴツとしたものに当たって痛いし、あ、頭痛い。ここは何処だ?何があった?


「ようやく起きたか、迅君。」


「ん?あ、族長さん。」


「あぁ、そうだ。まさか君がここまで酒に弱いとは思っていなかった。配慮できていなかった。すまなかった。」


「いえいえ、そんなことはないですよ。お酒美味しかったですし。」


それに飲まなきゃ多分貴方達が何かしてきそうだったし(白目)。本当は飲んじゃいけないんだけどね?異世界だから許されるよね?(ダメです。)


「そう言ってもらえると有り難い。」


...................................。

え、何この間。また居た堪れない空気作っちゃう感じ?


「迅君。」


「は、はい。」


「少し休憩した後、私についてきてくれないか?話したいことがある。」


「......わかりました。」


族長さんはそう言うと玉座の方へ行った。



.........段々思い出して生きたぞ。


俺昨日あの宴でアルコールの度数が低いジュースみたいな酒を飲んでいたんだった。で、そのあとおかわりを貰って、それを飲んで、そこから....あれ?思い出せない。


確か酒の匂いが強かったなぁって思ったところまでははっきりと覚えている。


『どうだ、迅くん、もう一杯いるか?』


『いやいや、流石に飲めませんって。』

ゴトン、トクトク


『............ 』


『さぁさぁ』


『...........ハィ』


....もしかしておかわりで貰った酒ってアルコール度数の高い別の種類だった?まさかの品違いでガチ酔いした?


俺が酔っ払って、そのあと寝落ちしてここまで運んでもらったんか?いや、申し訳ねー。酒を飲んでも呑まれるなってこう言うことなんかな。


やっぱり酒を飲むのは大人になってからにしよう。


地球の法律は間違っていなかった。

サンキュー、法律。


俺は十分な時間休んだので族長さんのところへ行った。


「えっと、休憩できたので準備万端です。」


「そうか、では行こう。」


族長さんはそう言って立ち上がり歩き始めた。


俺もそれについて行く。


まっすぐ進んで左に曲がって.....元来た道を通り過ぎ、俺は大きい建物の前に立っていた。


「凄いですね。この村に来てからですけど、建物に驚かされるばかりです。手は使えないのにどうやってこういう建物を作っているんですか?」


「村に土魔法に長けたものが居てな、其奴に頼んで建ててもらった。外見は少し派手に見えるだろうが中は意外に質素だ。そこまでレベルが高いものではない。」


「それでもですよ。ここまで大きい建物を作るのにどれだけ時間がかかりましたか?」


「1時間弱だ。」


「へ?」


なんと、見た感じ高さ4、5メートル程の建物が1時間弱で建てられたらしい。この世界の魔法って怖い。便利なんだろうが、これが人を殺すものになると......そう考えていたら、ゴブリンの切断された頭がフラッシュバックした。うっぷ


「どうした?迅君。顔色が悪いぞ?まだ酒が抜けきれていないのか?」


「いえ、違います。大丈夫です。気にしないで下さい。」


「そうか、もし体調が悪くなったら言ってくれ。今回の要件は急ぎのものじゃない。君の体が最優先だ。」


「ありがとうございます、族長さん。」


「当然のことだ。気にしないでくれ。」


そんな会話をしつつ、俺は大きな建物の中に入る。すると、懐かしい臭いがした。


「えっと、ここは?」


「我らが日々使っている特訓の施設で、道場と言う。」


やっぱり道場か。


中に入って真っ先に見えたのは、緑の井草が敷き詰められた床だ。多分、畳に近いものだ。頭のなかで学校の道場の風景と重なったしまさかな、とは思ったけどやっぱりか。


「良い場所だろう。私はここを気に入っていてね。」


「確かにそうですね。床に敷き詰められた井草の感触と臭い、どれも好きですし、外側とは違って中が木材で出来てて落ち着きますし。」


「分かるか、この良さが。妻は独特なこの臭いが得意ではないなどと言って、私がここに寄ると決まって鼻を塞ぎながら嫌な顔をするのだ。」


「まぁ、分からなくはないですよ。結構臭い強いですし。」


井草の臭いで好き嫌いが分かれるのも向こうと同じか。 




「さて、鎌風から粗方話は聞いているだろう?」


「.........ええ、まぁ。」


唐突に話題を振ってきたが、やはりその事か。


「理由も聞いたので納得してますし、知らないヤツを、ましてはじめましての他種族無警戒で迎え入れることなんで出来ないでしょうから。」


嫌な気分はしたけど、言わないでおこう。


「そうか...........そう言ってもらえると助かるな。」


こんな場所でばか正直に自分の思ったことを口にできるほど俺は頑強なハートを持っているわけではないのでね。


「...........話はこれだけだ。」


「え?」


「ここは誰も近づかないからな、こう言う余り聞かれたくないことを話すのにもってこいの場所だ。だからここに連れてきただけで、特段理由はない。」


「えと..........聞かれたくないとは?」


いや、別に聞かれたくない内容なんてなかったと思うが。


「.........族長としてな。」


ふむ...........いや分からんのだが。まぁ、聞かれたくないことがあったんだろ。俺が分かんないだけで。


「えと、それなら戻るんですけど..........」


「...........?どうした。」


「えと、み、道案内してくれる人が欲しいなぁって」


あいあむほうこうおんち。


「あぁ、そういうことか。なら大和をつけよう。」


「あ、ありがとうございます!」


「おそらく今はここの隣の訓練場にいるはずだ。今の内容を話せば案内してくれる。」


「分かりました。ちなみに、右左のどっちですか?」

「左だ。」


「ありがとうございます!」


よし急いでいくぞまたトイレ行きたくなってきた。







/////////////////////


「それで............ どうだ、何か見えたか?」


「いえ...........ヤツのを識別出来ませんでした。」


「ふむ、そうなるとやはり」

「お察しの通りかと。」








特殊属性持ちか。

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