第2話

数日後。


おそらく小学生ぶりだと思われる遊園地に私は来ていた。


キャラクターの銅像に噴水、いろいろな色や形の風船を配る着ぐるみ。


ポップな音楽と西洋風のお城やアーケード。


はあー、この現実離れした感じ懐かしいわぁ。


私はぐるりと園内を見渡す。


自分と同い年くらいの女子高生たちが自撮りしてるのを見て若いなと思った私はきっとどうにかしている。


私は一体いくつだよ。



「時雨ちゃん可愛い!勿体ない、こんなに美人さんなのに男装してるなんて」


「いえ、ありがとうございます……」



横で美杏ちゃんと手を繋いでいる美咲さんに言われ、顔が引き攣る。


いや、好きでやってるわけじゃなくて強制されてるんですよ。


でも、流石に遊園地でスーツ着た変人がいたらアレだしね……。


ワンチャンコスプレでいけるか?とか思ったけど、やめておいた。


そんなわけで、今日は普通の格好だ。


髪はセミロングで身長は靴の底上げがない分いつもより低い。


もともとあんまり背が高くないので底上げだけ欲しいけど。


格好も白いTシャツに黒色のショートパンツ、ロングカーディガンという普通の女子。


少々、女子力が足りてない気もするけれど、あくまでも護衛なのでそこはしょうがない。


ミニスカートとか履いたら蹴り技できないし。


おそらく、アニキがいなかったら気づいてもらえなかった。


私は隣にいる長身の男にちらりと視線を向ける。



「都くんも来るなんて珍しい。どうしたの?」



美咲さんもつられてか、アニキにそう問いかける。


アニキこと、都夏海。


矢神組の構成員であり、私の教育係みたいな立ち位置にいる男だ。


組長のお気に入りなので腕がたつことは確かだろう。


私、この人に負けたし。


と、まあ、それは置いておくとして。


私同様、彼もスーツではなく普通の服を着ていて、髪型などもちょこちょこいじっている。


刺青がいい感じに隠れていて、元の顔も割と普通にイケメンだからかヤのつく職業の人には見えない。


いじったのは私なので私を褒めて欲しいところだ。


そんなアニキは美咲さんの問いにさも当たり前のような顔でこたえる。



「コイツ、未成年なので。保護者です」


「何でこういう時だけ保護者付きなんですか?いつも危なっかしいことする時は一人で行かされるんですけど??」



思わずツッコミをいれれば目を逸らされた。


おい、私の保護者。


六歳くらいしか離れてないけど。


ジト目で見つめていれば、耳元でコソコソと何かを囁かれた。



「しょうがないだろ、夜月組長に頼まれたんだから」


「あの人、マジでなんなの?」



結局、私だけじゃ心配でアニキもつけたんかい。


心配性かよ……と心の中で思いつつまじまじとアニキを見る。



「てか、オールバックより軽く半分上げるくらいのほうが似合いますね」


「お前もそのままの方がいいんじゃないか?」


「私に男装させてる奴に言ってやってください」


「知るか、そんな性癖持ちの奴」


「子供の前で変なこと言うの控えてください」



暫く会話のキャッチボールならぬドッジボールをしていれば、美咲さんの服をチョイチョイと引っ張る美杏ちゃんが視界に入った。



「おかーさん、いかないの?」



美杏ちゃんの言葉に全員でハッとする。


あー、そうでした。


そうですよね、遊園地来たんですもんね。


こんなところで喋ってたらダメですよね〜。



「美杏、行きましょうか」


「うん!」



美咲さんの言葉に美杏ちゃんは笑って歩きだした。


そんなやり取りを私たちは見守る。



「いやぁ、平和ですね」


「昨日、繁華街でシマ荒らしを半殺しにした奴とは思えないコメントだな」


「その後、海に沈めたのはどこのどなたか覚えてますか?」

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