第55話 竜印の世代

「やはりカリンが居るとなると流石にここにいる者だけでは難しい」


「なに弱気になってやがる、ダンレン!」


「それは弱気にもなるだろう。武闘派の二人がやられたのだぞ?」


「ギーズ!お前までそう言うか! というか第一、お前の息子があの無能にバレちまったからややこしくなったんだろうが!」


「あいつは私の能力の上位互換だ。あいつが無理ならば他の者もバレていただろうよ」


 何やら分家当主3人で言い争っているようだ。しかし、これ以上時間稼ぎをされては竜印の世代が到着してしまうため、俺とカリンは構わずに攻撃を仕掛ける。


「敵前で仲間割れを始めるのは愚策だな」


「あいにく、あなた方にこれ以上構っていられないので」


 手っ取り早く、前に出ていたギーズとディランの意識を刈り取る。


「残っているのはダンレン、そしてシノ。お前達だけだ」


 ここまで追い詰められているというのにシノは未だ座ったままである。


「……こんなことをしてただで済むと思っているのか?」


 ダンレンがじろりとこちらを睨みつけながら言う。


「そもそもお前達が襲い掛かってきたんだろ?」


 コミュニティカードを操作する。


『捕えよ』


『悪く思うな。これもお前が素直に従わなかったのが悪いのだ』


「録音していたのか」


「そりゃそうだ。俺も公爵家の使用人だからな。そこのところは抜かりなくしている」


 そもそも音声としての証拠はあまり頼りないため、これを衛兵に突き出したところでこいつらを捕まえることはできない。


 しかし、ある程度の牽制にはなるだろう。


 案の定、ぐぬぬっと言いたそうな顔を浮かべてダンレンは引き下がる。


「お館様、竜印の世代はまだですか?」


「……」


「お館様?」


「静かにしろ。敵の前で焦りを見せることほどの愚策は無い」


「し、失礼いたしました」


「もうよい」


 今まで悠然と座っていたシノがようやく立ち上がる。


「カリンが居るとはいえ、足手まといのお前が居る時点で最早決着はついている。かかれ!」


 後ろの扉がガタンと蹴り飛ばされ、何者かが飛び込んでくる。


「しまった!」


 カリンが俺を守るように背後に回り込み、襲い来る大きな怪物を抑える。


 ガキィンッ!


「おうおう、カリン様がご乱心かぁ?おい」


 二本足で立つ狼の姿をした者が煽る。


 こいつはエヴァン・アイザック。俺が追放されたときに一番早く俺を嘲笑いに来たあの男だ。


「俺の能力『神狼フェンリル』がお前にどんだけ通用するかみせてやるよぉ!」


 カリンの剣を光り輝く狼の鋭い爪が押していく。


「あらあら、エヴァン。少し先走りし過ぎではなくって?」


「まあ、エヴァンらしいと言えばエヴァンらしいかな」


 狼男姿のエヴァンの後ろから続々と残りの竜印の世代が現れる。


「おじさま方やられ過ぎではないですか? カリンが居るとはいえもう片方はただの出来損ないですよ?」


「カリン、勇者である君を支える身としては道を踏み外してほしくなかったんだけどね。君のせいかな? クロノ」


 現10位のエヴァン、7位のセレン、そして5位のアンディ。


 カリンには劣るとはいえ、実質的に世界最強クラスのメンツだ。中には記録外の強者も居るのかもしれないが。それこそ魔物とかは記録なんてされないしな。


「へっ、やっぱり強えな」


 カリンの剣とエヴァンの強靭な爪とのせめぎあいはカリンの勝利で終わる。


「なんて馬鹿力」


「あいつらも成長してるってわけか」


 以前とは段違いの能力強度を保有した3人の姿を見て思う。


 3人はシノとダンレンを守るようにサッと俺達の前から移動する。


「ようよう! お館様! 俺達が現れたからにはご安心ください!」


「私達は5人そろって『五つの光』です! カリン一人に負ける気がしませんわ!」


「さてと、君たちには悪いけどおとなしく降伏してもらうよ?」


 ここからが本番だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る